◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
「ど、どうして!?」

 何故あたし達が成功したことを知ってるの??

「アイガーがピータンに知らせたんだ。それを聞いてね。今夜は自分がごちそう作ったから、みんなでお祝いしよう!」
「う、うん。ありがとう」

 とても嬉しいという気持ちを、微笑みとお礼の言葉に乗せたつもりだった。けれど僅かばかりの不安が、結局ラヴェルに次の言葉を紡がせていた。

「まだスティから打診はない。だから『今』を楽しもう? ユーシィ」
「……うん。──うん!」

 ごめん、ラヴェル。そして、ありがとう。

 タラとピータン、更にツパイとアイガーにもお礼を言い、あたしはみんなに続いてリビングへ足を進めた。きっと大丈夫。きっときっと大丈夫。だから出ていけっ、あたしの不安! そして出てこいっ、あたしの笑顔!!

 既にダイニングテーブルの上には色とりどりの料理が並び、あたし達の鼻腔と胃を刺激した。手洗いとうがいを済ませ席に着く。メインディッシュは良く煮込まれたブイヤベース。魚介の深い味わいが、食欲を永遠に失わせないかと思わせた。

 あたしは沢山沢山お喋りをした。ミルモのこと、彼女の家族のこと、ラヴェンダーの島のこと、その畑のおじさんのこと……アイガーの活躍に、ツパイのさすがな助言、花摘みの唄に……そしてあたしの母さんのこと。その度にラヴェルがニコニコと頷く。タラが突っ込む。ツパイはそれに上手く返して、ピータンが飛び跳ね、アイガーは元気良く一吠えした。

 みんなの笑顔は明日を忘れさせてくれた。忘れられた明日は、そのまた次の明日という未来を楽しい時だと信じさせてくれた。

 明日──きっと良い結果が待っている!

「ふわぁ~美味しかったー! お腹いっぱい~ごちそうさま!!」

 四人で分担し、キッチンはあっと言う間に片付いた。

「おやすみ、ユーシィ」

 入浴を先にと勧め、申し訳なさそうにそれを受け入れ済ませたラヴェルは、リビングで(くつろ)ぐあたしに声を掛けた。

「おやすみなさい。良く休んでね」

 タオルを肩に掛けた濡れ髪の紫色が、コクりと振られ消えていった。

 絶対みんなで笑顔を掴もう。

 例えそれが辛い経緯であろうとも──!


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