◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
「もう……本当はウェスティから呼ばれているのね?」
はたと立ち止まる、ラヴェルの足元。
「どうして……? 何で隠したの!?」
返事のない・振り向かない彼の前まで進んで問い詰めた。黒曜石の義眼が、涙を湛えたように潤んで光った。
「君をこれ以上巻き込みたくないんだ。ユーシィが眠っている間にカタを付けてくる」
いつも微笑を刻んでいるその面が、いつになく真顔になった。
「い、嫌よ……あたしも連れていって!」
「ダメだよ、ユーシィ。これはタラと自分の問題だ」
嫌だ……そんなの。あたしにだって関係はある。あたしの両親だって、ウェスティに殺されたんだ!
第一……もうラヴェルにこれ以上、辛い重荷を背負わせたくない!!
「お願いだから! あたしにだって仇討ちなんだからっ! ちょっと待ってて、すぐ支度するから!!」
「ユーシィ……」
あたしの大声にあたし以外の部屋の扉が開いて、ピータンとアイガーと、そして赤い革のつなぎを着たタラが現れた。
「やぁだ、ラウルったら見つかっちゃったのぉ?」
「……ごめん」
タラは後ろ髪を掻きながら、その手にはもうレイピアが握られていた。
やっぱり嫌だ……タラにもウェスティのとどめなんて刺させたくない!
「ユスリハちゃん。心配しないで大丈夫ヨ。朝食の支度して待ってて~すぐ戻ってくるから!」
「タラ……」
変わらないにこやかな笑顔。でもきっと……その裏には拭い切れない哀しみと苦しみを抱えている。
あたしは部屋に戻ろうと向けていた背を返し、タラにゆっくり近付いた。視線は高い位置にあるタラの微笑みを見上げながら、いきなり両手だけを伸ばしレイピアを奪い取った。
「いやーん! 意表を突くなんて、ユスリハちゃんのイジワル~~~!!」
驚いた声と苦笑いはおどけていたけれど、さすがのタラも慌てたようだった。
「お願い……少しだけ待ってて。あたしが支度をするまでの十分……いえ、五分でいいの」
「ユスリハちゃん~アナタのお陰で三日間たっぷり稽古が出来たの。ラウルも立派な剣士に昇格したんだから! 気にしないでココに居てちょうだい」
タラは調子を崩さずにいたけれど、その眼は笑っていなかった。左手を差し伸べて歩み寄るその姿に、あたしは真剣な瞳を向けながら後ずさった。
はたと立ち止まる、ラヴェルの足元。
「どうして……? 何で隠したの!?」
返事のない・振り向かない彼の前まで進んで問い詰めた。黒曜石の義眼が、涙を湛えたように潤んで光った。
「君をこれ以上巻き込みたくないんだ。ユーシィが眠っている間にカタを付けてくる」
いつも微笑を刻んでいるその面が、いつになく真顔になった。
「い、嫌よ……あたしも連れていって!」
「ダメだよ、ユーシィ。これはタラと自分の問題だ」
嫌だ……そんなの。あたしにだって関係はある。あたしの両親だって、ウェスティに殺されたんだ!
第一……もうラヴェルにこれ以上、辛い重荷を背負わせたくない!!
「お願いだから! あたしにだって仇討ちなんだからっ! ちょっと待ってて、すぐ支度するから!!」
「ユーシィ……」
あたしの大声にあたし以外の部屋の扉が開いて、ピータンとアイガーと、そして赤い革のつなぎを着たタラが現れた。
「やぁだ、ラウルったら見つかっちゃったのぉ?」
「……ごめん」
タラは後ろ髪を掻きながら、その手にはもうレイピアが握られていた。
やっぱり嫌だ……タラにもウェスティのとどめなんて刺させたくない!
「ユスリハちゃん。心配しないで大丈夫ヨ。朝食の支度して待ってて~すぐ戻ってくるから!」
「タラ……」
変わらないにこやかな笑顔。でもきっと……その裏には拭い切れない哀しみと苦しみを抱えている。
あたしは部屋に戻ろうと向けていた背を返し、タラにゆっくり近付いた。視線は高い位置にあるタラの微笑みを見上げながら、いきなり両手だけを伸ばしレイピアを奪い取った。
「いやーん! 意表を突くなんて、ユスリハちゃんのイジワル~~~!!」
驚いた声と苦笑いはおどけていたけれど、さすがのタラも慌てたようだった。
「お願い……少しだけ待ってて。あたしが支度をするまでの十分……いえ、五分でいいの」
「ユスリハちゃん~アナタのお陰で三日間たっぷり稽古が出来たの。ラウルも立派な剣士に昇格したんだから! 気にしないでココに居てちょうだい」
タラは調子を崩さずにいたけれど、その眼は笑っていなかった。左手を差し伸べて歩み寄るその姿に、あたしは真剣な瞳を向けながら後ずさった。