◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
『ラヴェル=ミュールレイン』
うちの家系は女性世襲だ。
彼は未来の希望を宿した名を、命の『鍵』に選んでいた。
あたしと共にヴェルではない地で、けれどヴェルを忘れないよう自身の名に刻み込んで……『明日』を生きてみたかったんだ。
「おはよー、ピータン」
ラヴェルの薄紫の髪の向こうで、丸まった灰色のピータンが目を覚ました。彼女もラヴェルと一緒に残り、そして『おはようのキス』だけはあたしに許してくれたので、こうして日課が出来ている。
「ね? こんないい天気、今日は何かが始まりそうな予感がしない?」
そう言ってベッドサイドのカーテンを端へ寄せた。ピータンが眩しそうに、ラヴェルと同じ黒曜石の瞳を瞬かせ、「起きなさい」と言うように、彼の頬をペタペタと撫でた。
あれからあたし達は沢山沢山泣いた。沢山泣いて涙は涸れて、声も出なくなった頃に夕闇が訪れた。
足の治ったタラがラヴェルを背負い、あたし達は何とかコテージに戻った。彼の部屋のベッドに寝かせ、誰もが押し黙りラヴェルを見詰めたまま、いつのまにか次の朝を迎えていた。
再び夕暮れがリビングを染めた頃、さすがにお腹が助けを求めた。それを機に何かが変わったんだ。
「ちゃんと食べないとダメだよ、ユーシィ」
ラヴェルにそう言われた気がして、キッチンに立ったあたしは夕食作りを始め、タラとツパイも後に続いた。美味しい匂いが立ち込めた時には、みんなに幽かな笑みが戻っていた。
うちの家系は女性世襲だ。
彼は未来の希望を宿した名を、命の『鍵』に選んでいた。
あたしと共にヴェルではない地で、けれどヴェルを忘れないよう自身の名に刻み込んで……『明日』を生きてみたかったんだ。
「おはよー、ピータン」
ラヴェルの薄紫の髪の向こうで、丸まった灰色のピータンが目を覚ました。彼女もラヴェルと一緒に残り、そして『おはようのキス』だけはあたしに許してくれたので、こうして日課が出来ている。
「ね? こんないい天気、今日は何かが始まりそうな予感がしない?」
そう言ってベッドサイドのカーテンを端へ寄せた。ピータンが眩しそうに、ラヴェルと同じ黒曜石の瞳を瞬かせ、「起きなさい」と言うように、彼の頬をペタペタと撫でた。
あれからあたし達は沢山沢山泣いた。沢山泣いて涙は涸れて、声も出なくなった頃に夕闇が訪れた。
足の治ったタラがラヴェルを背負い、あたし達は何とかコテージに戻った。彼の部屋のベッドに寝かせ、誰もが押し黙りラヴェルを見詰めたまま、いつのまにか次の朝を迎えていた。
再び夕暮れがリビングを染めた頃、さすがにお腹が助けを求めた。それを機に何かが変わったんだ。
「ちゃんと食べないとダメだよ、ユーシィ」
ラヴェルにそう言われた気がして、キッチンに立ったあたしは夕食作りを始め、タラとツパイも後に続いた。美味しい匂いが立ち込めた時には、みんなに幽かな笑みが戻っていた。