◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
「君は【薫りの民】でもないのに、いつも私を癒す良い匂いがする……」
「それは【彩りの民】としては、褒め言葉なのか疑問なところネ」
苦々しく喉から笑った少女の声に、彼はふと顔を上げた。再びかち合った瞳の先には、長い睫を困ったように瞬かせる麗しい彼女が居た。
「もちろん君の肌も髪も瞳も……そしてこの唇も……どんなに私の眼を愉しませてくれたか知れない」
そうして伸ばした右手の親指で、ウェスティはタランティーナの下唇をゆっくりなぞった。紅を付けなくとも赤みのある艶やかなそれが、一瞬驚いたように小刻みに震えた。
「今日は何だかセンチメンタルなのネ……先のことなんてどうなるか分からないけれど……アナタならちゃんとやれる筈ヨ。どうか自分を信じて、お父様の後をお継ぎになって」
少女は少し頬を上気させて、その熱視線から逃げようとした。このままではずっと守ってきた『箍』が外れてしまいそうだったからだ。
「そうだね……先のことなど誰も知らない……自分でさえも。でもその時君は……隣に居てくれないの?」
「え……?」
唇に触れていた指が腰に絡みつき、彼女はいきなり膝上に寝かされた。ウェスティの長い黒髪がドレープの如く彼女を閉じ込める。いつになく強引な態度を示した彼の様子に、タランティーナは戸惑いを隠せなかった。
「それは【彩りの民】としては、褒め言葉なのか疑問なところネ」
苦々しく喉から笑った少女の声に、彼はふと顔を上げた。再びかち合った瞳の先には、長い睫を困ったように瞬かせる麗しい彼女が居た。
「もちろん君の肌も髪も瞳も……そしてこの唇も……どんなに私の眼を愉しませてくれたか知れない」
そうして伸ばした右手の親指で、ウェスティはタランティーナの下唇をゆっくりなぞった。紅を付けなくとも赤みのある艶やかなそれが、一瞬驚いたように小刻みに震えた。
「今日は何だかセンチメンタルなのネ……先のことなんてどうなるか分からないけれど……アナタならちゃんとやれる筈ヨ。どうか自分を信じて、お父様の後をお継ぎになって」
少女は少し頬を上気させて、その熱視線から逃げようとした。このままではずっと守ってきた『箍』が外れてしまいそうだったからだ。
「そうだね……先のことなど誰も知らない……自分でさえも。でもその時君は……隣に居てくれないの?」
「え……?」
唇に触れていた指が腰に絡みつき、彼女はいきなり膝上に寝かされた。ウェスティの長い黒髪がドレープの如く彼女を閉じ込める。いつになく強引な態度を示した彼の様子に、タランティーナは戸惑いを隠せなかった。