◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
[21]芳香
荷を背負い、十分ほど平坦な草地を歩いた先にそのお宅は在った。丸太の組まれた山小屋風の家屋は、右奥に同じ素材の大きな家畜小屋を伴い、裏側には尖った杉の生い茂る、黒々とした山々が聳 えている。
「こんばんは、ロガール。約束通り来ましたよ」
ロガールって人が住んでいるのね。今度は……テイルさんみたいに打ちひしがれていないでしょうね?
扉の横の窓からは『人が真っ当に住んでいる』ことを裏付けるように、ちゃんと灯りが零れていた。微かに窓辺が揺らぎ、すぐに大きな人影があたし達の目の前に現れた。
「ラヴェルです、ロガール」
何でわざわざ名乗るのよ? 知り合いじゃないってこと??
「デリテリートの子孫か。随分大きくなったものだな。意外に早かったじゃないか」
デリテリート?
「……そちらのお嬢さんは?」
ラヴェルに声を掛けた後、白髭を蓄えたがたいの良い老齢の男性は、フッと瞳を細めてあたしを見た。
「ユ、ユスリハと申します、ロガールさん。えと……」
「ふぅむ……もしかしてミュールレインの子孫か?」
「え!?」
あたしは話途中で返された質問に、心の底から驚いた。どうしてあたしのラストネームが分かるの? この人は一体……?
「まぁ中に入りなさい。夕食は? ──そうか。こんな爺の手料理で良ければシチューがあるぞ」
ロガールさんは奥へ手招きしながらラヴェルに問い掛け、まだ食事前だとの答えに快く対応してくれた。ダイナミックな具材の煮込まれた、それでも十分美味しいシチューとパンを、あたし達に振舞ってくれる。
「こんばんは、ロガール。約束通り来ましたよ」
ロガールって人が住んでいるのね。今度は……テイルさんみたいに打ちひしがれていないでしょうね?
扉の横の窓からは『人が真っ当に住んでいる』ことを裏付けるように、ちゃんと灯りが零れていた。微かに窓辺が揺らぎ、すぐに大きな人影があたし達の目の前に現れた。
「ラヴェルです、ロガール」
何でわざわざ名乗るのよ? 知り合いじゃないってこと??
「デリテリートの子孫か。随分大きくなったものだな。意外に早かったじゃないか」
デリテリート?
「……そちらのお嬢さんは?」
ラヴェルに声を掛けた後、白髭を蓄えたがたいの良い老齢の男性は、フッと瞳を細めてあたしを見た。
「ユ、ユスリハと申します、ロガールさん。えと……」
「ふぅむ……もしかしてミュールレインの子孫か?」
「え!?」
あたしは話途中で返された質問に、心の底から驚いた。どうしてあたしのラストネームが分かるの? この人は一体……?
「まぁ中に入りなさい。夕食は? ──そうか。こんな爺の手料理で良ければシチューがあるぞ」
ロガールさんは奥へ手招きしながらラヴェルに問い掛け、まだ食事前だとの答えに快く対応してくれた。ダイナミックな具材の煮込まれた、それでも十分美味しいシチューとパンを、あたし達に振舞ってくれる。