◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
泣くことがどうにも出来なくなるほど疲れ果てたあたしは、いつの間にか陽の光がオレンジ色に染まるまで、草の斜面に横になり眠ってしまった。
放牧を終えた家畜達が、連なり我が家へと山を降りる。番いの白馬の内、がたいの良い牡馬の背に担がれたあたしは依然目覚めることはなく、山の奥へ消えていく美しい夕焼けも見られずに帰路へと着いた。夕食の時間まで屋根裏部屋に寝かされて、起こされても尚ぼおっとした頭で食事を進め、気付けばツパイの言葉にも曖昧な理解のまま相槌を打っていた。
ラヴェルもまた目を覚まさなかった。食事の片付けを済ませたツパイは、呆けたようにロッキングチェアを揺らすあたしを一瞥した後、再び数時間あいつの看病に集中した。やがて夜も更けベッドに潜り込む頃合いに、これから三日は起きられないのだからと飛行船で休むことを告げ、送るアイガーと共に小さな後ろ姿は闇へと消えた。
「ユスリハ……どうかラヴェルのこと、宜しくお願いします」
そう頭を下げたツパイにまた、一雫涙が零れて言葉は風になった──。
■此処までお目通しくださり誠に有難うございます。
本文の重苦しさに添わないのどかな画像で失礼をしております(汗)。
全て数年前に筆者がスイスを旅した際、撮影をした写真でございます。
乳牛はスイス原産から改良された「ブラウンスイス」という種類になります。
朧 月夜 拝
放牧を終えた家畜達が、連なり我が家へと山を降りる。番いの白馬の内、がたいの良い牡馬の背に担がれたあたしは依然目覚めることはなく、山の奥へ消えていく美しい夕焼けも見られずに帰路へと着いた。夕食の時間まで屋根裏部屋に寝かされて、起こされても尚ぼおっとした頭で食事を進め、気付けばツパイの言葉にも曖昧な理解のまま相槌を打っていた。
ラヴェルもまた目を覚まさなかった。食事の片付けを済ませたツパイは、呆けたようにロッキングチェアを揺らすあたしを一瞥した後、再び数時間あいつの看病に集中した。やがて夜も更けベッドに潜り込む頃合いに、これから三日は起きられないのだからと飛行船で休むことを告げ、送るアイガーと共に小さな後ろ姿は闇へと消えた。
「ユスリハ……どうかラヴェルのこと、宜しくお願いします」
そう頭を下げたツパイにまた、一雫涙が零れて言葉は風になった──。
■此処までお目通しくださり誠に有難うございます。
本文の重苦しさに添わないのどかな画像で失礼をしております(汗)。
全て数年前に筆者がスイスを旅した際、撮影をした写真でございます。
乳牛はスイス原産から改良された「ブラウンスイス」という種類になります。
朧 月夜 拝