棗くんからは逃げられない
「動かないでください」

解放された


かと思ったらしゃがんだ棗くんと目を合わせられる

目を逸らそうとしても顎を掴んだ細い指が許してくれない


「ぁぅ……あの…」

「実乃梨先輩、なんで逃げたんですか?」

「ひぇっ……なん!?」

鼻と鼻がくっつきそうなくらい近い距離で訊ねられた


吐息がかかり、一気に顔が熱くなる


「なんでですか?」

「っ……はなしてっ…ください」

「いってくれないと離さないです」

「~~~っ…」


自分だってさっき、この気持ちを理解したばっかりなのに口にするなんて……
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