棗くんからは逃げられない
「だから、嫌だったんです」

「え?」

「部屋から出たら、あのうるさい二人に絡まれるだろうなって思ってたんで」

「ふふっ…」


「………」

「なんっ…てすか?」

「実乃梨先輩、最近僕の前でも笑うようになったなーって」

膝の上で頬杖をつき、コッチを見つめてくる棗くん


その視線が恥ずかしくて佇まいをなおす


「それよりっ」

救急箱を受け取り、棗くんに近寄る


「痛いですよね?」

「いえ、慣れてます」

「なれっ………喧嘩してたんですか?」


耳から手を離し、じっと見上げる

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