地蔵くん、笑って、歌って、恋して!
「あ、地蔵くんだ」
「ほんとだ!
また地蔵みたいに黙って下向いてるよ」
廊下でそんな声が聞こえてきた
地蔵くん
そう言うと迷わず皆が
5組のあの子を浮かべると思う
もちろん私もそのうちの一人
目の前からこっちに下を向いて
歩いてきているあの子
黒縁のちょっとデカい眼鏡に長めの前髪
そう言えば顔はよく見た事がない
気になってすれ違いざまにチラッと見る
ずっと下を向いてるもんだから全く見えない
ボケーッと振り返って
猫背の彼の後ろ姿を眺める
って、何してるの私!!
先生のところに行かなきゃ!!
コンコンっ
物理室の横の準備室のドアをたたく
「陽葵?入っていいぞ」
陽葵「桜木先生、学校で陽葵呼びはやめてくださいって言ってますよね」
「そんな事言うなよ〜
俺とお前の仲だろ?」