偽装結婚の行く末
「Webエンジニア!そうなの……」


昴が自己紹介とともに会社の名刺を渡すと夫人は目を輝かせる。
おっ、手応えあり?


「実は三男が会社を立ち上げるんだけど、ちょうどWebエンジニアの会社を探してたところで。
よかったらあなたのこと紹介させていただいてもよろしいかしら」

「ええ、もちろんです」

「少し待ってくださる?息子を呼んで来るから」


とんとん拍子に話が進んで、夫人はその場を離れてこの会場にいるらしい息子を探しに行った。
昴は無言で小さくガッツポーズ。


「……もしかして昴の狙いって、始めから息子の方だったの?」

「せーかい」


なんだ、有名企業に売り込みなんて血迷ったと思ったら、そっちが狙いだったわけ。
昴のことだし、もしかしてWebエンジニアを探してるってのもリサーチ済みだったのかも。


「美優のおかげでスムーズに進んだ。ありがとな」


こっちを見てウインクなんてするくらい上機嫌。


「……もしかしてあたし、アゲマン?」

「その言葉古くね?やっぱ中身おっさんだな」


調子に乗ったら古いって言われた。
通じたらいいじゃん、若い子ぶるなアラサーのくせに!

なんて思いつつ、その日は美味しいものを食べて飲んで幸せだった。
今日は商談の間も一緒にいてくれて、やっぱり昴にとっての特別になれたんだと思って嬉しかった。
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