偽装結婚の行く末
「……酒臭っ」

「最悪、ロマンチックなこと言ってよ」

「お姫様、お酒とお戯れになりすぎでは?身体中からアルコール臭がプンプンします」

「言い方の問題じゃないし」


酔ったらゲラになる昴は、ツッコミを入れたらツボに入ってしばらく笑ってた。


「やっぱ美優がいい」

「何の話?」


ひとしきり笑った昴はあたしの腰を抱いて歩き出す。


「お互い自然体でいられるもんな」

「女に言い寄られるのが面倒だからあたしで手を打ったくせに」

「美優ちゃんツンデレ?連れねーな」

「ウザイ」


ピシャリと言い放っても昴の頬はゆるんだまま。


「……昴って子どもができたらウザがられそう」

「へえ、美優の中ではそこまで思い描いてんの」

「違う、今のは例え話!」

「はいはい、照れ隠しが乱暴だこと」


左右に揺れながら歩くから釣られてゆらゆら。
人がいないからいいけど、あたしたち大概変なことしてる。


「大丈夫、俺はもっと先まで想像してた」


揺れるリズムに乗って昴は本音を吐き出した。
……なにそれ、ずるい。
酔ってるおかげで頬が赤いのがバレなくて幸いだった。
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