偽装結婚の行く末
「殴っても暴言吐いても、その顔じゃ一目瞭然だから」

「だから、赤面させて何したいの」

「赤面させるのが目的じゃなくて、愛でてるんだよ。美優が不安にならないように」


あたしのため、それはただと言い訳だってわかってる。
本当はあたしのリアクション見て楽しんでるくせに。

でも楽しんでる割には、あたしにしか見せない無邪気な笑顔だからまあいっか。


「じゃ、今から行ってくるからゆっくり寝てろ」

「うん、気をつけてね」

「なんだかんだ心配してくれるとこもかわいいよな」

「いい加減ウザイ」


無限にからかってくるから睨むと「はいはい」と言いながら家を出た昴。
だけど玄関が閉まると頬がゆるんで勝手に口角が上がる。
目線の先にはきらめく婚約指輪。
ベタでチョロいけど、形で示されると本当に結婚するんだと実感して昴のこともっと好きになる。

入籍するまであと1ヶ月。
残る独身生活を楽しまなきゃ。
そんなことを思ったけど、昴のいない部屋はなんだか寂しくて結局二度寝した。
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