偽装結婚の行く末
「照れてない!なんか今日の昴、変なんだけど」

「仕方ねえだろ、浮かれてんだよ」


下手な照れ隠しを見て見ぬふりをして爽やかな笑顔を浮かべる昴。


「あたしと結婚してってこと?」

「そうそう、婚姻届も絶対2人で提出したかったから職場のみんなに『今日は何があっても職場に俺を呼ぶな』って脅しておいた」

「いや、仕事の方が大事でしょ」

「俺にとっての優先順位は美優が一番」


2人で来たかったとか、仕事よりあたしが大事とか……ああ、もう。
好きが渋滞して何も言えずに赤面しちゃうじゃん。


「なんなの……」

「はは、真っ赤だな」

「勘弁して……ただでさえ暑いのに」


体温が急上昇した気がして顔周りをパタパタ手で扇ぐ。
それにしても、セミの鳴き声がうるさくてよかった。
小っ恥ずかしいあたしたちの会話もかき消してくれるから。
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