偽装結婚の行く末
「白井くん改めて奥村くん、結婚おめでとう」

「え、あ……ありがとうございます」


ロビーに来た社長は真っ先にあたしに近づいてきた。
すごい、もう新しい名字覚えてる。
びっくりして狼狽えちゃった。


「君の結婚相手、奥村昴くんだったんだね。驚いたよ」

「夫のこと、ご存知なんですか?」

「先日来た時に気になって名前を覚えてたんだ。
彼はきっと出世するよ。いい目をしてた、がむしゃらに頑張ってた昔の自分を思い出したよ」


穏やかな口調で、目尻にしわを集めて笑う社長。
……すごいな昴、宮古社長に覚えてもらえるなんてよっぽどだよ。


「いやぁ、それにしても世間は狭いね。ははは」


笑いながら歩いて、社長はエレベーターに乗って上階に向かった。

……それにしても、初っ端から新婚いじりがすごい。
正直まんざらじゃないからいいけどさ。
< 134 / 182 >

この作品をシェア

pagetop