偽装結婚の行く末
11月に式の日程が決まったから、一足先に招待状を渡しに実家にひとりで向かった。
家族なら渡さなくていいかなと思ったけど、律のリアクションが見たかった。
きっとあの子は招待状を渡したらいいリアクションをしてくれそう。


「律、ただいま！……あれ、母さんは？」


元気に帰宅して律に抱きついたけど、母さんの姿が見当たらない。


「母さん今日出勤になったって。
新人の子がノロウイルスで倒れたとかなんとか」

「埋め合わせで出勤ってこと？母さんも大変だね」


病院で看護師長として働く母さんはかなりハードな仕事をしてる。
夜勤とかあるしあたしには絶対無理。
それなのに50過ぎても働くからほんとに偉いと思う。


「『仕方ないから私が出る、しっかり休みな』ってその子に電話で言っててかっこよかったよ」


それにしても、一緒に住んでて母さんの嫌なところもいっぱい見てるのに、律はいい所をしっかり褒めてすごい。
あたしは家を出る前、母さんの悪い所しか見なかったから。
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