偽装結婚の行く末
「じゃあお任せするよ」

「はい、10時までに終わらせます」


社長はよろしくと言ってエントランスの奥へ進む。


「遠藤さん、お手伝いしましょうか〜?」

「大丈夫です、制服濡れたら大変ですよ」

「……確かに!」


社長がいなくなった後、菜々美がかわいく首を傾げても遠藤さんは表情ひとつも変えない。
黙々と新しい魚を水槽に入れる準備をしてる。
手際がよくて入る隙がない……さすが敏腕総務。

仕事ができて口も硬くて、きっとこういう人は情に流されなくて偽装結婚に向いてるよな。
遠藤さんを見ながらふと思った。

こういう人の方が適正なのに、なんで昴はよりによってあたしを選んだの?
幼なじみってだけで人を騙すほどの頭もなけりゃ演技力もないのに。
100万もらってるからそんな野暮なこと聞かないけどさ。

やっぱりあいつが何考えてるか分かんないや。
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