偽装結婚の行く末
「お前のことだから俺に当たり散らすと思ったのに。成長したな、美優」

「うるさいってば!」


小馬鹿にした笑い方にムカついて思わず手が出る。
しかし、昴はその手を掴んでグイッと自分の方に腕を引いた。
至近距離で見下してくる昴。図らずとも意識して身を引きたい衝動に駆られる。


「珍しく美優にときめいたかも」

「だったら何?」

「試しに付き合ってみる?」


離れたいのに手を離してくれないし、また冗談を言ってあたしを惑わせようとする。


「そんな冗談ばっかり言って……万が一あたしが絆されたらどうすんの?」

「まだ“万が一”なんだ。意外とガード硬いな」


こいつに絆されたら負けだと思ってる。
てか、面白半分であたしを落とそうとするのウザイ。


「やっぱり殴っていい?」

「やだ、美優のビンタはマジで痛そう」

「ビンタじゃなくて拳だけど?」

「いいけど律になぐられたってチクるから」

「それはずるい」


割と本気で怒ったのに、律の名前を出されると気が引ける。
まったく、心配して損した。いつもの意地悪で何考えてるか分からない昴だ。
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