偽装結婚の行く末
「……あの後、律に怒られた」


そんな昴が急に大人しくなってポツリと呟いたものだから「え?」と疑問がそのまま声に出る。
へえ、あたしにはいくら怒られたってビクともしないのに、律に怒られるのはショックなんだ。


「姉ちゃん泣きそうだったって。原因分かってるくせになんで戻ってきたのかって」

「さすが律、いつだってあたしの味方なんだから」

「反省した。美優の実家について行ったのは軽率だった。ごめんな」

「昴らしくないじゃん。いいよ気にしなくて。
あたしと母さん、仲が悪いの知ってるでしょ」

「俺のせいで?」


その質問がすぐ出てくるってことは、実家の事情をなんとなく察してたみたい。


「昴のせいじゃなくて、母さんの性格の問題だよ。
変なところが遺伝して気が強いから衝突しちゃうんだよね」


気にしてませんって示すために笑顔で答える。
ところが昴は腕を組んで眉を寄せた。


「美優ってさ、ここぞって時に身を引くよな。
俺に不満をぶつけるチャンスなのに」

「……そう?」

「さてはお前、俺のこと好きだろ」


なるほど、今は不満をぶつけていいってことね。
今の言葉がムカついたから、かなり手加減してビンタしてやった。
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