偽装結婚の行く末
指定された高そうな焼肉屋に着いたら個室に通された。
引き戸を開けると昴はもう肉を焼き始めている。
相変わらず自分勝手なヤツ。


「よお、元気してる?」


ゆるくパーマをかけた黒髪に切れ長の目。
少しミステリアスな雰囲気で色気がある。

イケメンだけど、昔から何考えてるか分かんないから嫌い。


「元気なわけないじゃん……」


席に座ってボソッと呟いた。
昴は「なんで?」と言いながら自分だけ先に頼んだビールを飲む。


「クズ男に引っかかったの。悔しい……」

「だろうな、お前昔っから男見る目ねえもん」


昔からあたしのこと全部お見通しでほんとムカつく。


「うるさい、慰めろ、今日は奢れよ!」

「はっ、相変わらず口悪ぃな。お前もどうせ猫かぶってたんだからおあいこだろ?」

「あたしが口悪いのはあんたのせいだ!」


腹が立って睨みつけたらで昴は片方の口の端を上げて笑った。
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