偽装結婚の行く末
「ははっ、いい飲みっぷり」

「飲まなきゃやってらんないし」

「そうだな。たくさん飲んで食って、男のことなんて忘れな」


昴は他意のない無邪気な笑顔を浮かべる。
ったく、いつまでもお兄ちゃんぶっててさぁ、こういうところほんとウザイ。


「で、政略結婚の相手ってどんな人なの?」

「おっ、乗り気だな。引き受けてくれんの?」

「違うし、話のネタになりそうだから」


話題変換したくて話しかけたら「あっそ」と言って昴は軽くため息をついた。


「ざっくり言うと、取引先の娘が俺を大層気に入ったから結婚したいんだと。
結婚したらウチの会社にとってかなりいい条件で取引してくれるって」

「いいじゃんメリットあるなら」

「だからタイプじゃねえんだって、顔も体型も。
胸はあるけど下品な感じが無理」

「そこまで言うとただの悪口だから。そんなに嫌なら直接本人に言えばいいじゃん」

「バカ、本人に言えるわけねえだろ。刺されるわ、俺」


確かに昴はろくでもないけど、刺されるのは佐久間みたいなクズだから大丈夫。
……くそ、佐久間を思い出すとやっぱり腹が立つ。
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