僕らは運命の意味を探していた。
「お待たせー‼」

「やっと主人公様のお出ましですよ……。はあ……。」

 集合時間の三十分超過。ようやく発案者が姿を見せた。

「さあさあ、始めてまいりましょうか……。」

「・・・・・・その前に。どうして遅れたのか、理由を説明してもらおうか。」

 これくらい言わせてもらわないと気が済まなかった。

 行動の責任は取ってもらおう。俺はそう心に決めていた。

「言わなきゃ駄目……?」

「当たり前だ、お前の口から説明しろ。塾があるの忘れてました、とね。」

「え……‼ なんでそれを知ってるのよ。」

「俺、お前のお母さんと、ズブズブな関係って、忘れた訳じゃないよな。」

 勿論、やましい意味は無い。

 ただの仲良しで、連絡先を交換している程度だ。時々来海のお母さんから、連絡を貰ったり、俺から近況を聞いたり。

 それくらいの『仲の良い親友のお母さん』くらいの感覚だ。

「……その言い方はやめて。誤解が生まれるでしょ。」

「誤解って?」

 俺は疑問の念を抱きながら二人の顔を見ると、片方の顔色が妙に青ざめていた。

「隼人、お前。来海さんのお母さんを……。何て奴だ‼」

「久々に喋ったと思ったら、変なこと考えてんじゃねえよ‼ 目つきわりぃな、お前。」
「目つきは今、関係ないだろ‼」

 こうしていつもの流れに入っていく。三人の掛け合いを来海は幸せそうに眺めていた。

 来海は、この掛け合いを眺めているのが幸せだと、いつかのタイミングで聞いた。

 だから、来海はわざとこのノリに発展するように、俺や一好に対して種を蒔いていた。

 閑話休題。どうでもいい話はそこまでにして本題に移る。

 カルピスの原液と氷、それから天然水を来海のお母さんから貰って、そろそろ五杯目に突入するところだった。

「早速なんだけど、これを見てもらいたいの。」

 来海はシルクのような白色のショルダーバックの中から、今朝見つけた水色の大学ノートを机に置いた。

「日記じゃん。これがどうかしたの?」

 俺は、いち早く食いついた奏と、グレーを基調としたベッドにもたれる一好に、発見までの経緯を説明した。

「目つき悪いのと奏ちゃん、理解できたか?」

「だから、目つきは関係ないだろって‼」

 この返しが来ると、自分の中の張り詰めていたものも、少し解かれていくような気がする。

 いつもなら普遍的な一場面に感じるけど、ここ最近は少し特別に感じていた。

「まあ、そう言う事だから。まだ俺らも内容までは目を通してないんだ。」

 俺は少し緊張していた。

 いじめの対象となった人間の日記がどれほど残酷で、書き主の苦しんだ形跡が残っているのか。率直にかなり怖かった。

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