僕らは運命の意味を探していた。
俺は、建設会社の社長を改めて憎く思った。
弱冠十五歳に対して、大人でも耐えるのが難しい精神的苦痛を、何年にも渡って味わわせたという事実に、俺はそいつを一発殴りたい心持ちになった。
聞いている限りでは、あの二人だって被害者だ。ここまでされる筋合いは無かったはず。どうしてそうなってしまったのだろうか。
「というか、一岡のお父さんを苦しめるために、何でその息子を狙ったんだよ。」
「確かに。そもそもなぜ二人がやらなくちゃいけなかったの?」
俺がそう言うと、どうしてか、奏ちゃんは首を振った。
「ううん。二人は自らやったんよ。両親を守るために。だって、二人は知ってたんよ。息子を攻撃するのが、一番早く傷つけられることをさ。」
奏ちゃんは、平然と恐ろしい事を言った。
でもこれが現実だった。
僕は受け入れるしかないと思った。
「日に日にやつれていく二人を見かねて、早期解決策を、紗南と俊也は練ったんだ。少し痛めつけるだけでよかった。でも、それでは社長の気が済まなかったんだ。」
俺は、繰り広げられる光景を想像するだけでも、体の節々が痛くなってきた。
「徐々にエスカレートしていって、一岡のお父さんの自殺でその役目は終わった。」
「お父さん、自殺したのか…………?」
「理由は詳しく知らないけど、俺は二人からそう聞いたよ。」
俺は、一岡のお父さんが、気の毒に思えて仕方なかった。
一岡のお父さんは、どこかのタイミングで息子のいじめを知って、それが自分のせいだったら、お父さんは責任を感じるだろう。
しかも人から人望を集めるほどの人格者、責任感にも定評があったに違いない。
「高校に入り、二人を待っていたのは白けた目線だったんだ。いじめっ子、人でなし。そうクラス中から罵られる日々が続いた。」
一好が言ったこと、俺は当然の光景のように感じた。知らない奴らからすれば、二人のやった事は『いじめ』、その名詞の意味通りの行為だろう。
「ウチたちも最初は距離を置いてたんよ。でも、臨海学校で同じ班になった時に、今言ったことを全部教えてくれた。」
「ああ。その場に俺もいてな、話を全部聞かせてもらったよ。そんな話聞かされたら、嫌うに嫌えなくなって。今の関係になったんだ。」
なぜ、二人が一好と奏ちゃんに話そうと思ったのか。それは俺に分かるはずもなかった。
あくまで俺の想像だが、そうせざるを得ない状況にまで追い込まれていたからだと、俺は思った。
全ての原因は、そのクズ社長にあると言っていいだろう。
どんな動機であれ、何人もの人を苦しめた行為は到底看過できるものではない。
「一岡は、高一の夏休み前に自殺したと聞いているよ。あの三人から解放されて高校で生活していた時だから、あの三人には関係ない話だけどな。」
重くのしかかる非情な現実。それを知った俺らは、何も言うことが出来なかった。
「まあ、真道君とあきちゃんにはあまり関係ない話かもな。どういう経緯で真道君の家にあったのかは分からないけど。」
「いや、真道には関係あるわよ。だってあの子もあの村出身のはずだから。」
「二人と同郷なのか?」
「ええ。けれど何の関係があるのか、私には分からないわ。四歳の時に、真道のお父さんの転勤で、こっちに引っ越したそうだから、物心つくころには離れてるわね。」
もし一岡が犯人だとすると、真道とあき、それから院長の息子が標的となった理由が分からなかった。
「で、結局犯人は分からず仕舞いか。」
「他に、真道君の部屋からは何も出てこなかったの?」
「ええ。それくらいしか手掛かりは無いわね。真道の小学生時代を知ってる人が、私たちの周りに一人でいれば、少し違うのかもしれないね……。」
来海の言ったことはごもっともだと思った。
確かに、それを知っている人がいれば、二人との共通点も自ずと見つかってくるかもしれない。そうなれば、事態も発展するだろう。
「ご両親に聞くのも気が引けるし……。八方塞がりかな。」
自分の布団に身を投げた来海は、諦めたようにそう言った。奏ちゃんと一好の顔も曇っている。
弱冠十五歳に対して、大人でも耐えるのが難しい精神的苦痛を、何年にも渡って味わわせたという事実に、俺はそいつを一発殴りたい心持ちになった。
聞いている限りでは、あの二人だって被害者だ。ここまでされる筋合いは無かったはず。どうしてそうなってしまったのだろうか。
「というか、一岡のお父さんを苦しめるために、何でその息子を狙ったんだよ。」
「確かに。そもそもなぜ二人がやらなくちゃいけなかったの?」
俺がそう言うと、どうしてか、奏ちゃんは首を振った。
「ううん。二人は自らやったんよ。両親を守るために。だって、二人は知ってたんよ。息子を攻撃するのが、一番早く傷つけられることをさ。」
奏ちゃんは、平然と恐ろしい事を言った。
でもこれが現実だった。
僕は受け入れるしかないと思った。
「日に日にやつれていく二人を見かねて、早期解決策を、紗南と俊也は練ったんだ。少し痛めつけるだけでよかった。でも、それでは社長の気が済まなかったんだ。」
俺は、繰り広げられる光景を想像するだけでも、体の節々が痛くなってきた。
「徐々にエスカレートしていって、一岡のお父さんの自殺でその役目は終わった。」
「お父さん、自殺したのか…………?」
「理由は詳しく知らないけど、俺は二人からそう聞いたよ。」
俺は、一岡のお父さんが、気の毒に思えて仕方なかった。
一岡のお父さんは、どこかのタイミングで息子のいじめを知って、それが自分のせいだったら、お父さんは責任を感じるだろう。
しかも人から人望を集めるほどの人格者、責任感にも定評があったに違いない。
「高校に入り、二人を待っていたのは白けた目線だったんだ。いじめっ子、人でなし。そうクラス中から罵られる日々が続いた。」
一好が言ったこと、俺は当然の光景のように感じた。知らない奴らからすれば、二人のやった事は『いじめ』、その名詞の意味通りの行為だろう。
「ウチたちも最初は距離を置いてたんよ。でも、臨海学校で同じ班になった時に、今言ったことを全部教えてくれた。」
「ああ。その場に俺もいてな、話を全部聞かせてもらったよ。そんな話聞かされたら、嫌うに嫌えなくなって。今の関係になったんだ。」
なぜ、二人が一好と奏ちゃんに話そうと思ったのか。それは俺に分かるはずもなかった。
あくまで俺の想像だが、そうせざるを得ない状況にまで追い込まれていたからだと、俺は思った。
全ての原因は、そのクズ社長にあると言っていいだろう。
どんな動機であれ、何人もの人を苦しめた行為は到底看過できるものではない。
「一岡は、高一の夏休み前に自殺したと聞いているよ。あの三人から解放されて高校で生活していた時だから、あの三人には関係ない話だけどな。」
重くのしかかる非情な現実。それを知った俺らは、何も言うことが出来なかった。
「まあ、真道君とあきちゃんにはあまり関係ない話かもな。どういう経緯で真道君の家にあったのかは分からないけど。」
「いや、真道には関係あるわよ。だってあの子もあの村出身のはずだから。」
「二人と同郷なのか?」
「ええ。けれど何の関係があるのか、私には分からないわ。四歳の時に、真道のお父さんの転勤で、こっちに引っ越したそうだから、物心つくころには離れてるわね。」
もし一岡が犯人だとすると、真道とあき、それから院長の息子が標的となった理由が分からなかった。
「で、結局犯人は分からず仕舞いか。」
「他に、真道君の部屋からは何も出てこなかったの?」
「ええ。それくらいしか手掛かりは無いわね。真道の小学生時代を知ってる人が、私たちの周りに一人でいれば、少し違うのかもしれないね……。」
来海の言ったことはごもっともだと思った。
確かに、それを知っている人がいれば、二人との共通点も自ずと見つかってくるかもしれない。そうなれば、事態も発展するだろう。
「ご両親に聞くのも気が引けるし……。八方塞がりかな。」
自分の布団に身を投げた来海は、諦めたようにそう言った。奏ちゃんと一好の顔も曇っている。