僕らは運命の意味を探していた。
「ただいまー。買って来たわよ。」

 奏と来海は共に、お揃いの白い携帯扇風機からくる風を、額に残る汗に向けて浴びせていた。

「家の二人は、何やってたのー?」

「仮説を考えてた。」

「ほう…………。その仮説とやらを聞かせてもらおうじゃない。」

 俺は、挑発的な来海に対して苛立つことなく、毅然とした態度で考えを話した。

「考えは分かったわ。筋も通ってるし、良いと思う。でも、肝心の証拠は?」

「それが、まだ無いんだよな……。」

 それさえあれば、この仮説も完璧なものになる。どうしたものかと、俺はずっと頭を悩ませていた。

「他にも容疑者はいないし、決めつけたいとこだけど……。」

「いかんせん、可能性が低すぎる。なにより、犯人が使った方法も浮かばない。」

 目つきの悪い男はそう言った。それを最後に、声を発する者はいなくなった。

 恐らく、一好の後に続くような言葉を思いつく人間はいた。

 でも、雰囲気と各々の心持ちとを鑑みた結果、声に出すことを拒んだのだろう。俺もフワッとした返しは、用意が出来ていた。

 流れる沈黙の時間。思考回路を停止させ、誰もスマホすらいじろうともしない。

 この『無』ともいえる時間に誰が終止符を打つのか。それは僕の右隣に移動していたあいつだった。

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