僕らは運命の意味を探していた。
「一つ、皆に頼みがある。」
「どうしたんだ?」
「皆とある場所に行きたい。今は、場所名を伏せさせてくれ。」
一好の唐突の発言に、一瞬戸惑いは生じたものの、俺らの答えは決まっていた。
「いいよ。どうせ暇だし。」
「行こー‼ 楽しそうな感じじゃん‼」
俺と奏ちゃんはテンション高く、一好の提案に乗り気だった。
しかし正反対の女子が一名、真正面に座っていた。
「厳しいかもしれない……。」
何となく予想はしていた。来海は、今日一日空けるのだって相当大変だったはずだ。
半日潰れる塾と、それに見合った課題の山。来海はそれを消化する日々を送っていた。
目の前で二人の細かな調整が行われている。あの様子からは、恐らく厳しいだろう。
来海が、手に顎を乗せて考える姿は、真剣そのものだった。
「……隼人って、クーちゃんの事好きっしょ?」
「うわあ……‼」
「どうしたの、隼人?」
「い、いや。何でもねえよ……。」
首をかしげた来海は、一好との会話を再開した。それを見計らって、俺は奏ちゃんに視線を戻した。
「やめろよ……。びっくりするだろうが……。」
「えー。それくらい良いじゃん。」
「……よくねえよ。」
そう俺は小声で返すと、奏ちゃんは小学生のような、好奇心に満ちた表情を俺に向けて来た。
「で? どうなの? クーちゃんの事、好きなの?」
「べ、別に、好きじゃねえよ。」
「ふーん……。そんな真っ赤な顔で言われても、説得力無いんよね。」
「んな……‼ そんな顔になってねえよ‼」
「鏡見てきなって。耳まで真っ赤だから。」
俺は、恥ずかしさのあまり顔を背けてしまった。恐らくその様子を見て更に、生意気ギャルが調子に乗る事だろう。
「どこが好きになったの? 顔、体、性格? どれ?」
案の定、体の距離感を縮めてきて、俺のデリケートな部分に土足で押し入ってきた。
「性格かな……、って何言わせてんじゃ、ボケ‼」
俺は口にしたことを後悔した。生意気ギャルに、いじられる材料を作ってしまったからだ。
しかしそれだけでは足りていないようで、生意気ギャルは、疑わしい物を見るような目で俺を見た。
「へー。性格ねえ……。じゃあ、あの豊満な胸部には、興味ないってことで、いいのかなぁ~?」
俺はおもむろに、来海に視線をやった。
部屋着なのか、Tシャツ短パンというカジュアルスタイルで、俺らの前にいた。
その恰好は、胸の部分がかなり強調されていて、目のやり場に困る服装だった。
「別に、人を見るうえで胸より性格だろ。」
「そんな綺麗事、聞きたくないんよね~。男は皆、おっぱいに弱いんだからさ。」
生意気ギャルの言う事に異論はない。現に俺もあれだから・・・・・・。
しかし、胸が大きいからと言って、付き合いたいという気持ちに繋がるかと言ったら、俺は繋がらないと思う。
「でもさ、いくら大きくたって、人を見るうえではあんまり関係ねえ気がするぞ。やっぱり性格が合うかどうかなんじゃねえのか。」
「それほんとに言ってる? じゃあウチみたいな貧乳でも付き合えんの?」
「性格が合えばな。全然奏ちゃんの事知らねえし、今は無理だけど。……って言うか、なに、俺の事好きな訳?」
俺が冗談交じりで言うと、奏ちゃんは嘲笑を浮かべて言った。
「なわけ。ただ、うちが貧乳代表として例に挙げただけだし。」
「あっそ。ていうか、自分で言って悲しくなんねえの?」
「もう諦めてるから良いんよ……。」
生意気ギャルはそう自虐を放り込むと、どこか遠くを見つめているようだった。
「じゃあさ、奏ちゃんは一好を好きにはならないの?」
俺は仕返しとばかりに聞いてみた。
「好きだよ。でも、一好はさ、まだ気づいてくれてないみたいなんよね。」
どうしてだろう。期待した応えと違う気がした。そんな重たい空気を誘うような質問を、投げかけたつもりは無かった。
もっとこう、顔を真っ赤にして、少しうぶな感じで照れるのを期待していた。
「隠さねえんだ……。」
「まあね。ウチそういうの抵抗ないんだ。だから結構オープンに言っちゃうんよ。」
奏ちゃんに勝手な男気を見た俺は、意を決して言った。
「俺もな、来海の事は、好きだぜ。」
「ふーん。でも何で言う気になったの?」
「奏ちゃんが言って、俺が言わねえのはフェアじゃねえだろ。」
俺が真剣にそう言うと、奏ちゃんは噴き出したように笑った。
「隼人って変に律儀なんね。そんなこと考えなくてもいいのにさ。」
「律儀なのかは分かんねえけど、俺の流儀だからな。それをしねえのは気持ちわりぃんだ。」
俺は誰とでも対等な立場を望む。親であれ、親友であれ、恋人であれ。
どの関係性でも、その気持ちは変わらなかった。
「まあ、二人とも恋が叶うと良いな。」
「ね。お互い助け合っていこう。」
そして俺らは握手を交わした。
変なテンションになっていたからだとは思うが、傍から見たら、頭のネジが外れた、可笑しなカップルにしか見られないだろう。
でも俺らにそんな事は関係なかった。目的達成のために手を組む、単純かつ合理的な判断だと思った。
「どうしたんだ?」
「皆とある場所に行きたい。今は、場所名を伏せさせてくれ。」
一好の唐突の発言に、一瞬戸惑いは生じたものの、俺らの答えは決まっていた。
「いいよ。どうせ暇だし。」
「行こー‼ 楽しそうな感じじゃん‼」
俺と奏ちゃんはテンション高く、一好の提案に乗り気だった。
しかし正反対の女子が一名、真正面に座っていた。
「厳しいかもしれない……。」
何となく予想はしていた。来海は、今日一日空けるのだって相当大変だったはずだ。
半日潰れる塾と、それに見合った課題の山。来海はそれを消化する日々を送っていた。
目の前で二人の細かな調整が行われている。あの様子からは、恐らく厳しいだろう。
来海が、手に顎を乗せて考える姿は、真剣そのものだった。
「……隼人って、クーちゃんの事好きっしょ?」
「うわあ……‼」
「どうしたの、隼人?」
「い、いや。何でもねえよ……。」
首をかしげた来海は、一好との会話を再開した。それを見計らって、俺は奏ちゃんに視線を戻した。
「やめろよ……。びっくりするだろうが……。」
「えー。それくらい良いじゃん。」
「……よくねえよ。」
そう俺は小声で返すと、奏ちゃんは小学生のような、好奇心に満ちた表情を俺に向けて来た。
「で? どうなの? クーちゃんの事、好きなの?」
「べ、別に、好きじゃねえよ。」
「ふーん……。そんな真っ赤な顔で言われても、説得力無いんよね。」
「んな……‼ そんな顔になってねえよ‼」
「鏡見てきなって。耳まで真っ赤だから。」
俺は、恥ずかしさのあまり顔を背けてしまった。恐らくその様子を見て更に、生意気ギャルが調子に乗る事だろう。
「どこが好きになったの? 顔、体、性格? どれ?」
案の定、体の距離感を縮めてきて、俺のデリケートな部分に土足で押し入ってきた。
「性格かな……、って何言わせてんじゃ、ボケ‼」
俺は口にしたことを後悔した。生意気ギャルに、いじられる材料を作ってしまったからだ。
しかしそれだけでは足りていないようで、生意気ギャルは、疑わしい物を見るような目で俺を見た。
「へー。性格ねえ……。じゃあ、あの豊満な胸部には、興味ないってことで、いいのかなぁ~?」
俺はおもむろに、来海に視線をやった。
部屋着なのか、Tシャツ短パンというカジュアルスタイルで、俺らの前にいた。
その恰好は、胸の部分がかなり強調されていて、目のやり場に困る服装だった。
「別に、人を見るうえで胸より性格だろ。」
「そんな綺麗事、聞きたくないんよね~。男は皆、おっぱいに弱いんだからさ。」
生意気ギャルの言う事に異論はない。現に俺もあれだから・・・・・・。
しかし、胸が大きいからと言って、付き合いたいという気持ちに繋がるかと言ったら、俺は繋がらないと思う。
「でもさ、いくら大きくたって、人を見るうえではあんまり関係ねえ気がするぞ。やっぱり性格が合うかどうかなんじゃねえのか。」
「それほんとに言ってる? じゃあウチみたいな貧乳でも付き合えんの?」
「性格が合えばな。全然奏ちゃんの事知らねえし、今は無理だけど。……って言うか、なに、俺の事好きな訳?」
俺が冗談交じりで言うと、奏ちゃんは嘲笑を浮かべて言った。
「なわけ。ただ、うちが貧乳代表として例に挙げただけだし。」
「あっそ。ていうか、自分で言って悲しくなんねえの?」
「もう諦めてるから良いんよ……。」
生意気ギャルはそう自虐を放り込むと、どこか遠くを見つめているようだった。
「じゃあさ、奏ちゃんは一好を好きにはならないの?」
俺は仕返しとばかりに聞いてみた。
「好きだよ。でも、一好はさ、まだ気づいてくれてないみたいなんよね。」
どうしてだろう。期待した応えと違う気がした。そんな重たい空気を誘うような質問を、投げかけたつもりは無かった。
もっとこう、顔を真っ赤にして、少しうぶな感じで照れるのを期待していた。
「隠さねえんだ……。」
「まあね。ウチそういうの抵抗ないんだ。だから結構オープンに言っちゃうんよ。」
奏ちゃんに勝手な男気を見た俺は、意を決して言った。
「俺もな、来海の事は、好きだぜ。」
「ふーん。でも何で言う気になったの?」
「奏ちゃんが言って、俺が言わねえのはフェアじゃねえだろ。」
俺が真剣にそう言うと、奏ちゃんは噴き出したように笑った。
「隼人って変に律儀なんね。そんなこと考えなくてもいいのにさ。」
「律儀なのかは分かんねえけど、俺の流儀だからな。それをしねえのは気持ちわりぃんだ。」
俺は誰とでも対等な立場を望む。親であれ、親友であれ、恋人であれ。
どの関係性でも、その気持ちは変わらなかった。
「まあ、二人とも恋が叶うと良いな。」
「ね。お互い助け合っていこう。」
そして俺らは握手を交わした。
変なテンションになっていたからだとは思うが、傍から見たら、頭のネジが外れた、可笑しなカップルにしか見られないだろう。
でも俺らにそんな事は関係なかった。目的達成のために手を組む、単純かつ合理的な判断だと思った。