僕らは運命の意味を探していた。
五章

対峙

 僕らは階段を一段ずつゆっくり昇っていた。

「この先って、屋上だよね。そこにゲームマスターがいるって事?」

「ああ。間違いないだろうな。」

 僕は、紗南から受けた質問に即答した。

 始めの時期からずっと、僕には疑問があった。ほとんど姿を見せないあいつは、どこにいるのだろうかと。

 どこから僕らの行動を監視していて、何をして過ごしているのか。

 僕は、手掛かりすら全く無い状態だから、半ば諦めの心持ちだった。

 一縷の光も途絶えかけた時に、この暗号を見て思い出した。

 そういえば一か所だけ捜索不可能な領域があった事を。

 幾度となく活動時に訪れても、その場所だけは、固く閉ざされたまま、開かれることは無かった。

 それは屋上に繋がる唯一の扉である。一見、どこにでもある光景のように思われる。

 でもこの世界に、入れない場所が一つしか無かったら、間違いなくここを疑だろう。しかもあの暗号付きだ。

「でも、開いてないんだろ。どうすんだよ。」

「大丈夫。絶対に入れるから。」

 僕は自信ありげな表情を浮かべて、階段をのぼりながら二人に言った。

「何で、そう言い切れんの?」

 紗南は、素直な疑問を僕に投げかけた。

 確かに僕の発言には、何の説得力も無くて、付き合うのも馬鹿らしいことかもしれない。

 しかし、僕の勘は『絶対大丈夫。』と断言していた。

「証拠も根拠もない。でも、絶対大丈夫だから。僕を信じて。」

 二人を諭すように言った。

 それで二人の発言は途絶えたけど、流石に信用の色が薄いような気がしている。

 どっちにしても、行けば真実は見えてくる。約三週間にも及ぶ、壮大なデスゲームに終止符が打つ時が迫っていた。

 この間に色んな事があった。

 三人の尊い命が犠牲になって、残った僕らは、それぞれ背負うべき過去を思い出し、胸に刻むことを決意した。

 あきとの短かった両想いの関係。皆で作った温かみのある雰囲気。

 そして、友花の裏切り……。
 
 数多あった出来事を心の中に仕舞い込んで、現実と対峙する時が来た。

 特に二人には頑張ってもらうほかない。一歩的な集中砲火になる予感すらした。

 
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