僕らは運命の意味を探していた。
 一岡は淡々と自分の一生を語った。

 十六年で閉じた一岡龍次の人生は、あまりにも理不尽という言葉が似合いすぎた。

 自分では作りようのない、防ぎようのない、数々の出来事が一岡に襲い掛かっていた。

 その中で久々に僕は声を発した。

「二人が連れてこられた理由は、一岡をいじめたから。僕の理由はアツを死に追いやったから。……って事でいいのか?」

「ああ。それだけ罪深い事を重ねていたら、連れて来るにも十分な理由だ。」

 なんて傲慢で、なんて自分勝手な理由だろう。僕に関して言えば、一岡にとやかく言われる筋合いは無いはずだ。

「二人とも言っていいか?」

「・・・・・・うん。任せる。」 

 司令官も無言で頷いて、僕の発言権の行使を許可した。

「二人が一岡をいじめた理由は、何か知ってる?」

「そんなの私が、気に食わなかったからだろ。他に何の理由があるんだ?」

 一岡の発言を聞いて、僕は少しずつお腹の奥底から、何かが沸々と湧き上がってくるような感じがした。

「自分たちの両親を守るためだったんだ。一岡に真実を告げなかったのは、一岡自身傷ついたのは真実だし、守るために利用してしまった罪悪感があったからなんだ。」

 僕にもこの話を聞いて考えた事があった。

 いくら自分たちの両親を守るという、もっともらしい目的があったとしても、取った行動は自分勝手な行動に過ぎない。

 恐らくその事は二人の頭の中に、当然あったはずだ。

 それでも、当時中学生だった二人には親たちを守るという選択に至った。

 人を傷つけるという事実が、目に見えているにもかかわらず、その選択肢を選んだ。

 僕はその理由を長い間考えていた。

 この世界に入って、脱出という目的のために、人のために献身的に働く二人の姿を見て来た僕は、更にその理由に結論がつけられなかった。

 しかしその理由は案外、単純なものだった。それを司令官が一岡に話した。

「当時中学生だった俺らは、両親が辛そうにしている顔を見るのが、嫌だったんだ。一岡には本当に申し訳ない事をしたって思ってる。でも、俺らの選んだ道が間違いだったかどうかは、俺にも分からない。」

 紗南、司令官、一岡。それぞれの親が働いていた職場で、会社の社長が起こした、私利私欲に走った出来事。

 それによって、何人もの人々が傷つき、一人の命が絶たれた。

 二人もいわば被害者である。無関係の場所から、いきなり関係者の範囲に引きずり込まれたのだから。

 結果、二人が最悪の事態を引き起こしてしまった事は、もう反省する以外に方法は無い。

 一生を掛けて償う事で反省していけばいいと、僕は思う。

「皆が、一岡のお父さんの事が好きで、命令を下された二人の両親も頭を抱えて、悩みぬいたそうだ。」

 僕がこの真実を伝える意図として、これを聞きたかった。

「一岡は、この事実を知っていたのか? 自分だけじゃない、二人も苦しんでいた事を。」

「知らなかった……。」

 
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