僕らは運命の意味を探していた。
「そろそろ行くか。」

「いいのか、もう行って。」

「……いいよ。じゃないといくら時間があっても、きりが無いから。」

 彼らと友達ではなかったにしろ、一好は罪悪感を必ずどこかに抱えているのだろう。

 誰よりも大きなそれは、今こうやって行動することによって、紛れているに過ぎない。

 時々襲ってくる感情の波に、押しつぶされそうになりながら、一好は俺らに笑顔を見せていた。

 一好は自分の意思でなく同調圧力で、無理やりいじめさせられた。

 しかし、どんな理由であれいじめたことに変わりはない。

 それが一好の中で理解できているから、こうして一岡龍次の思い出に触れると、あの頃の記憶が戻ってくるのかもしれない。

 一年半の年月を経ても、三年間で傷ついた一好の心が回復することは無かった。

 時々、部屋に籠って罪悪感にさいなまれることがあるそうだ。それだけ一好は、昏睡状態の二人と遜色ないほどに責任感は強く持っていった。

 恐らくだが、治ることは無いだろう。思い出す度に古傷の傷口が開いてしまうから。

 治療しても、忘れようと心がけても、環境を変えても、色濃く残った記憶が簡単に消えるはずがないのだから。

 だから、上手く付き合っていくしかないと、俺は思う。自分の中で上手く咀嚼していくしかないと思う。

 俺でもいい、来海でもいい、奏ちゃんでもいい、誰でもいいからサポートを頼む方がいいのだろう。

 共存の仕方はいくらでもある。それが一好と合うかは別として、探せば数多の可能性が出てくるはず。

 その中で、一好にジャストフィットする方法を、選択肢の中から選び、何度も試行錯誤して結果を出す。失敗してもいい。

 挑戦あるのみだ。使えるコネをフル活用して、自分の歩む人生を少しでも楽に出来たら、それでいいのだ。

「そろそろ着くよ。」

「ここは……神社か?」 

 俺の目の前にある建物からは、かろうじて赤みが見える程度の、色合いが見て取れた。

 木造の建物で、装飾品が見当たらない。

 提灯やしめ縄をよく見かけるが、それらが一切ないという事は、ずいぶん前から人の管理下から外れたのだろう。

 俺は、錆びついた金属製の賽銭入れに、五円玉を投入し、二拝二拍手一拝をした。

 願い事はもちろん四人が返ってくるように。それ以外の選択肢はなかった。

「そこに石造りの階段が見えるだろ、そこからまた昇るよ。」

「この上には何があるんだよ。」

「まあ、行けば分かるって。」

 一好の後に俺らが続く形をとっていた。

 院長先生は依然としてダム見学を続けていた。

 正直な話、あの人にはこのことを伝えていない。どうせ来ないだろうし、来たところで足手まといにしかならないからだ。

 
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