僕らは運命の意味を探していた。
「……いいな。俺さ、この景色ずっと、見ててえよ。」

 俺は、どこか心が洗われていくような感覚がしていた。

「俺さ、三時間くらい、ここでボーとするのが、好きなんだよね。」

「なんかそれ、すげー分かる気がするぞ。」

 俺は一好の気持ちに賛同した。

 それから、俺たちは無言で雄大な景色を眺めていた。楽しい訳でも、気持ちが良い訳でもない。

 ただ、その景色に目が奪われてしまっていたのだ。俺は一岡をはじめとした、十六夜村の住人の気持ちが、少しだけ理解できたような気がした。

「一回ダムに戻るな。院長先生のとこ行くわ。」

「ああ。行ってら。」

 俺は、ダムに向かう一好の背中を見送って、二人が腰掛けていたベンチの右隣に腰かけた。

 景色に夢中になっていて、気づかなかったが全身が汗まみれで、このままだと脱水症状が心配されるほどだった。

 一好が戻ったすぐ後に、二人も一好の後を追って戻った。単純に涼みたかったらしい。

 二人は一好の目的完全無視で、この展望台を去ってしまった。

 二人の行動はどこか、惜しい事をしているような気がした。

 一人になって、ふと真道たちを思い出す。
あきが衰弱傾向にあるという話を聞いた。 

 他の三人は何ら変わりないのに、なぜかあきだけが弱っていた。

 俺らの知らない所で何かが起きているのか? 
 
 犯人が病室に侵入を? 

 どれも確率がかなり低い話だ。

 たまたま衰弱傾向にあるだけの可能性も捨てきれないし。経過を見ていくしかない。
いつでも死ぬ可能性がある。

 そんな内容を医者は、平然と告げた。仕事だから仕方ないかもしれないが、オブラートに包んでくれてもいいような気はした。

 しかし、四人はそれだけ危険な状態にいる事を忘れてはいけない。現に同じ状態だった、友花という人も亡くなっている。

 真道たちにその順番が回ってくる可能性だって、十分あるだろう。

 『俺たちに出来る事は何もない。』

 無力な自分たちを象徴するような言葉だと思う。

 どう足掻いても、どう抗っても、俺らが四人の命を左右する行動を取ることは出来ないのだ。

 僕は視線を上げて再び、大自然の目下を眺めた。

 あの地平線の彼方には何があるのだろうな。

 四人の元気な姿が見えることは無いかな、神様が来て四人を起こしてくれる事もないかな。

 僕は思った。また来海、真道、あき、俺の、四人で笑っていたあの日々が戻ってきて欲しいと。

 色々あったけど結局楽しかった、あの空間が蘇って欲しいと。

 皆は、今にも不安で押し潰されそうな状態にあった。

 明るく振舞っている奏ちゃんにも、時々後ろ向きの発言を漏らす時があった。

 それでも自分の闇を隠して、光のような態度でいるのは、親友が返ってきた時に、沈んでいたらいけない。そんな気持ちの表れだと俺は思った。

 
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