僕らは運命の意味を探していた。
「……俺はさ、やっぱり建設会社の社長を許せねえよ。」

「ええ。よくあんな私利私欲で、人を傷つけられるわよね。気が知れないわ。」

 来海の意見に、俺は反論なく賛成できた。

 人の心を弄ぶほど、この世で無益なことは無い。そう俺が思っているから。

 金も名誉もある人間が、どうして人のためになるような行動が出来ないのか、俺には意味が分からなかった。

「あの社長ってどうなったんだ?」

 ふと疑問に思って来海に尋ねたが、俺は調べるのを忘れていた。

 今になってその事実に気付いた僕は、もしかすると猛烈に疲れているのかもしれない。

「会社、倒産したって……。」

 来海は俺の質問を受けるとすぐに、膝の上に置いていたスマホを持ち上げ、調べた結果を報告してくれた。

「えっ……。なんで?」

「欠陥工事が見つかって、信用不振に陥り発注が減少したんだって。それで経営不振で倒産したんだってさ。」

「それで社長は?」

「逮捕されたそうね。賄賂だけじゃなくて、脱税までしてたみたいで。」

「じゃあ、二人の親戚も、逮捕されてるのか?」

「ええ……。一週間前に、その建設会社の社長と一緒にね。今後、あの二人がどうなるのか、心配ね。」

 来海は、少し言いづらそうな雰囲気を醸し出していた。

 もう心配どこの騒ぎじゃない。

 あいつらが目を覚ました時に、何かと厄介な事情に巻き込まれている可能性が大いにある。

 そう気がついた時、俺の中から、感覚が無くなって行くような妙な感じがした。

「まあ、なんかあったら、俺らで何とかするしかねえからよ。頑張ろうぜ。」

 俺は笑顔で来海に言った。

「そう言うとこだよね。隼人が優しいなって感じるの。」

「……なんか照れるな。」

 俺には分からないけれど、来海が感じる、何かがあるのだと思う。

 自分で言うのも悲しいが、俺自身を優しい人間だと感じたことが無い。だから、実感が湧いていなかった。

 俺の言葉を最後にして、俺と来海は話を続けることを止めた。
 
 止めたというか、雰囲気的に止めざるを得なかったという感覚だった。

 
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