僕らは運命の意味を探していた。
あの日ゲームマスターから、突然の死刑宣告を受けた僕らは、一度離散し、各々が状況を受け入れるために時間を使った。
一番時間が掛かったのは僕だった。
数日間展望台のベンチから腰を上げることもせずに、俯くか、柵の外に広がる田園風景を眺めるか、どちらかしかしていなかった。
毎日、色んな人への懺悔の繰り返し。
隼人、来海、両親、何よりあきの事を考えると、後悔の念が一気に押し寄せてきた。
耐えられそうになくて、自らの命を絶とうとも考えた。
しかし、それは出来なかった。僕の命は、あきが命と引き換えに残してくれたものだったからである。
僕は一週間以上もの間、あのベンチに座って、自責の念に駆られていた。
ある時、石造りの階段から音が聞こえた。
それは男女二人の明るい声だった。
「お前は、いつまでそこで、うな垂れてる気だ?」
聞き覚えのある、男子の声が聞こえたかと思うと、ふと目の前に影が出来上がった。
僕は驚いたような表情を浮かべて見上げると、微笑む二人の顔がそこにはあった。
「気持ちは分かるけどよ、いつまでも落ち込んでたら、人生損だぜ?」
司令官は励ますようにそう言った。
二人のメンタルには恐れ入る。僕の豆腐のような精神力では、到底太刀打ちできなかった。
二人がいてくれたからこそ、ここまでたどり着いたのだろう。僕はそう思った。
「……凄いな二人は。僕には立ち直れそうにないや。」
僕は二人と目を合わせることが出来なかった。
僕には二人が眩しく見えた。
いつ、僕らの鼓動が止まるか分からない状況で、前向きな二人が、僕とは対照の場所にいるような気がして、無意識に目を逸らしていた。
「凄いというか、真道にあり過ぎたんじゃない? メンタルをえぐられるような事がさ。」
「あきの事とか、一年前の事とか。で、それに加えて今回のこれだろ。流石にキツイよな……。」
僕は二人の慰めの言葉を、無言で聞いていた。
二人の言葉を受けて、僕は改めて、塞ぎ込んでいた日々を思い返してみた。
僕の心は、精神的な攻撃を幾度となく受けた事によって、既に粉々に砕け散っていた。
立ち直るのが不可能な程に、それは原型を留めていなかった。恐らく修復は絶望的なのだろう。
でも、それは僕だけが抱える問題じゃないはずだ。
「……二人もでしょ、それは。・・・・・・中学時代とか、高校も大変な事沢山あったんじゃないの?」
「あったけど、私たちは割り切れてたから。諦めもつてたしね。」
それでも二人は強いと僕は思った。彼らの覚悟は、僕なんかより何倍も強固だった。
それは、あれを割り切るのには相当な苦労があったと思うから。
恐らく、二人には初めから全体像が見えていたのだ。
両親の代わりに悪役を背負っていじめて。いじめた事で買った反感をちゃんと受け止めて。
それを分かった上で、きちんと責任を取る。流石にここまでとは思っていなかっただろうけど。
返って来た事を流さず、体全体で受け止める。
そんな覚悟を初めから持っていたのだと、俺は思った。
「すげーな、やっぱ……。二人には敵いそうにないよ。」
「凄い事ないって。真道の場合より、有利な点が多かったってだけだからさ。」
二人はそう謙遜するけど、二人がそこに自分で気付けた事が、僕はすごいと思う。
乗り越えたという言い方が正しいのか、僕には分からないけど、受け止めたという事実は揺るぎなかった。
どうしたって、受け止められない事の一つや二つは、誰しもが持っているはずだ。勿論それは二人にもあった。
でも、そこを何とか押し殺して、現実を受け入れたのだ。
恐らくこれ以上続けると、鼬ごっこになり兼ねない。
だから、納得いっていないなりに話を綺麗に終わらせた。
「とりあえず、戻らない? ここにいても暑いでしょ。」
紗南はそうやって、僕が基地に戻るように促した。
正直今のままで戻りたくはなかった。
僕が戻る事で基地の空気も重くなるだろうし、二人に気を遣わせると、俺は思った。
この時点でだいぶ気は使わせているが、それ以上に居心地が悪くなってしまうのでは、という危惧が僕の頭の中にはあった。
しかし、ここにいつまでも居座っている方が、余計心配させてしまうのだろう。
僕は、そう判断して数日ぶりに立ち上がった。
「・・・・・・分かった、帰るよ。」
そうして一週間ぶりに基地へ帰った僕は、速攻で眠りに落ちてしまった。
どうやら相当の疲労だったらしい。
一週間一睡もしなかったから、疲労も限界点にまで達していたようだ。
一番時間が掛かったのは僕だった。
数日間展望台のベンチから腰を上げることもせずに、俯くか、柵の外に広がる田園風景を眺めるか、どちらかしかしていなかった。
毎日、色んな人への懺悔の繰り返し。
隼人、来海、両親、何よりあきの事を考えると、後悔の念が一気に押し寄せてきた。
耐えられそうになくて、自らの命を絶とうとも考えた。
しかし、それは出来なかった。僕の命は、あきが命と引き換えに残してくれたものだったからである。
僕は一週間以上もの間、あのベンチに座って、自責の念に駆られていた。
ある時、石造りの階段から音が聞こえた。
それは男女二人の明るい声だった。
「お前は、いつまでそこで、うな垂れてる気だ?」
聞き覚えのある、男子の声が聞こえたかと思うと、ふと目の前に影が出来上がった。
僕は驚いたような表情を浮かべて見上げると、微笑む二人の顔がそこにはあった。
「気持ちは分かるけどよ、いつまでも落ち込んでたら、人生損だぜ?」
司令官は励ますようにそう言った。
二人のメンタルには恐れ入る。僕の豆腐のような精神力では、到底太刀打ちできなかった。
二人がいてくれたからこそ、ここまでたどり着いたのだろう。僕はそう思った。
「……凄いな二人は。僕には立ち直れそうにないや。」
僕は二人と目を合わせることが出来なかった。
僕には二人が眩しく見えた。
いつ、僕らの鼓動が止まるか分からない状況で、前向きな二人が、僕とは対照の場所にいるような気がして、無意識に目を逸らしていた。
「凄いというか、真道にあり過ぎたんじゃない? メンタルをえぐられるような事がさ。」
「あきの事とか、一年前の事とか。で、それに加えて今回のこれだろ。流石にキツイよな……。」
僕は二人の慰めの言葉を、無言で聞いていた。
二人の言葉を受けて、僕は改めて、塞ぎ込んでいた日々を思い返してみた。
僕の心は、精神的な攻撃を幾度となく受けた事によって、既に粉々に砕け散っていた。
立ち直るのが不可能な程に、それは原型を留めていなかった。恐らく修復は絶望的なのだろう。
でも、それは僕だけが抱える問題じゃないはずだ。
「……二人もでしょ、それは。・・・・・・中学時代とか、高校も大変な事沢山あったんじゃないの?」
「あったけど、私たちは割り切れてたから。諦めもつてたしね。」
それでも二人は強いと僕は思った。彼らの覚悟は、僕なんかより何倍も強固だった。
それは、あれを割り切るのには相当な苦労があったと思うから。
恐らく、二人には初めから全体像が見えていたのだ。
両親の代わりに悪役を背負っていじめて。いじめた事で買った反感をちゃんと受け止めて。
それを分かった上で、きちんと責任を取る。流石にここまでとは思っていなかっただろうけど。
返って来た事を流さず、体全体で受け止める。
そんな覚悟を初めから持っていたのだと、俺は思った。
「すげーな、やっぱ……。二人には敵いそうにないよ。」
「凄い事ないって。真道の場合より、有利な点が多かったってだけだからさ。」
二人はそう謙遜するけど、二人がそこに自分で気付けた事が、僕はすごいと思う。
乗り越えたという言い方が正しいのか、僕には分からないけど、受け止めたという事実は揺るぎなかった。
どうしたって、受け止められない事の一つや二つは、誰しもが持っているはずだ。勿論それは二人にもあった。
でも、そこを何とか押し殺して、現実を受け入れたのだ。
恐らくこれ以上続けると、鼬ごっこになり兼ねない。
だから、納得いっていないなりに話を綺麗に終わらせた。
「とりあえず、戻らない? ここにいても暑いでしょ。」
紗南はそうやって、僕が基地に戻るように促した。
正直今のままで戻りたくはなかった。
僕が戻る事で基地の空気も重くなるだろうし、二人に気を遣わせると、俺は思った。
この時点でだいぶ気は使わせているが、それ以上に居心地が悪くなってしまうのでは、という危惧が僕の頭の中にはあった。
しかし、ここにいつまでも居座っている方が、余計心配させてしまうのだろう。
僕は、そう判断して数日ぶりに立ち上がった。
「・・・・・・分かった、帰るよ。」
そうして一週間ぶりに基地へ帰った僕は、速攻で眠りに落ちてしまった。
どうやら相当の疲労だったらしい。
一週間一睡もしなかったから、疲労も限界点にまで達していたようだ。