僕らは運命の意味を探していた。
「昨日、私のお墓に中学の同級生がお墓参りに来てね、近況を話してくれたんだよ。」

「えっ、お墓参りの時の声って、届いてるのか?」

「勿論だとも。一言一句全部聞いているよ。」

 僕は一岡の言葉にぎょっとした。

「そいつは、真道君たちの一件の容疑者を、私だと考えているらしいんだ。」

 一岡は、薄ら笑いを浮かべながらそう言った。

「で? それがどうしたんだ?」

「聞いてさ、笑っちゃったよ。『もしお前なら、頼むからやめてくれ』って言うもんだからな。凄いと思わないか? 普通死者にそんなこと頼まないだろう。」

 一岡は嘲笑うようにそう言った。

 一岡の言い分は、僕にも分かる。『既に亡くなった人を容疑者にする』のは、無関係の人間を容疑者に仕立て上げるようなもの。

 言い換えれば、全く無関係の人を、容疑者にとしてでっちあげるという事だ。

 ミステリー小説で、死んだ人間の霊の仕業と見せかけるものと、全く同じ展開だと言えるだろう。

 しかし今回に関しては、犯人が本当に死んだ人間。

 だから、お墓参りに来た中学の同級生の推理は、ご名答だったという事になる。

 思い返してみると、僕らが掴んだ証拠は全て『一岡龍次』という人間に、たどり着くようできていた。

 もし同じような証拠の品が、現実世界でも発見されているのであれば、その答えが導き出させるのは、自然の摂理なのだろう。

 僕は段々と、一岡の抱いた気持ちから離れていった。

「別に。可能性が一岡にしかないのなら、当たり前じゃないか?」

 僕がそう返したところで、一岡が聞く耳を持つわけもなく、馬鹿にする態度を変えることは無かった。

「だって、死者に向かってだよ? 普通、どうにもならないって分かるでしょう。なのに、私の前で手なんか合わせちゃってさ。」

 段々と、人の必死の行動に嘲笑を浮かべる一岡に、我慢の限界を迎えてしまいそうだった。

「嫌われて正解だよ。理不尽が降ってきて正解だ。お前みたいな奴と、友達だったアツが凄いんだよ。」

 怒りに任せて、僕は心無い言葉を投げかけた。

 確かに、中学の同級生さんが話した事柄については、馬鹿にされても文句は言えない内容なのかもしれない。

 しかし、その事が正しいと理解していた上で、その人を馬鹿にするのは、流石に看過できない行為だと、俺は思った。

 僕はそこから、変なスイッチが入ってしまったようで、一岡に対して思ったことを、全て吐き出してしまった。

「いきなり何を言って……。」

「そんな事で他人を馬鹿にするようなお前に、人が集まると思ってるのか? その手を合わせてくれた人は、自分の過ちをきちんと認めて、こうして来てくれてるんじゃないのか? そんな人を馬鹿にする権利を、お前ごときの人間が持ってるとでも言うのか?」

「……ごときとは何だ‼ 随分な言い方じゃないか。」

「したくもなるわ‼ 本当に一岡が一歩的にやられていたなら、同情できたと思うよ。でもさ、今の態度から見てそんな感情湧いてこないよ。どうせ中学校でも、人の事傷つけてたんじゃないのか。」

 僕の顔には、怒りの表情が露骨に出ていただろう。顔が紅潮しているのが分かる。

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