僕らは運命の意味を探していた。
 しかし僕の中には、知りたかったことがあった。

 そこの部分に差し掛かった時、僕は真剣に聞くようになっていた。

「私はね、自殺を決意したんだよ。敦也が亡くなったって話を聞いて、私の生きる意味が無くなったんだ。私は君の事も聞いててね、殺意が芽生えたほどだったよ。」

 僕はひたすらに黙って聞いていた。

 アツの話をした人がどんな温度、ニュアンスで、僕の事を語ったのかは分からない。

 でも決して僕の印象が良くなるような発言で無かったのは、一岡の言葉からも読み取れた。

 一岡の昔話は幕を閉じた。

 結局、僕が期待した話が出てこないまま、一岡は昔話をやめてしまった。期待外れ感が否めなかった。

 僕は少しだけ肩を落としていた矢先、なにやらこの場の空気が変わった。

 ガタン。

 唐突に背後の扉が開いた。

 どうせあの二人のどちらかだろう。そう思い、軽い気持ちで振り返った。

 次の瞬間、僕は呼吸の仕方を忘れていた。

「二人とも、そんなに呆気に取られた顔してどうしたんだよ。」

 その人物は、屈託のない笑顔で僕らを見ていた。

 唖然とする僕らをよそに、その人物はどんどん距離を縮めて来た。

 そこで僕は、ありったけの力で声を出した。病人のような細い声しか出なかったけれど、意図さえ伝えられればそれでよかった。

「なんでお前がここに…………。アツ……。」
< 141 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop