僕らは運命の意味を探していた。
世間話もするし、互いの近況も何となく話す仲になっていた。
「隼人君は最近見かけなかったけど、旅行でも言ってきたの?」
「ああ。前ここに来た四人と、ちょっと遠くに。」
俺の口から院長先生の名前を出す事が、どうしてか憚られた。
厚意にしてもらった事を口外するのは、言ってはいけない秘密を暴露するようで、罪悪感に苛まれそうな感じがした。
別に言う必要性も無いから、言わなくても咎められることも無い。だから俺は口にしなかった。
「いいねー。何か青春してるなって感じするよ。私は今、それどころじゃ無いほど忙しくてね。」
若干のやつれ具合と、目の下の黒い部分を見れば何となく想像は付いた。
ふと俺は、珍しく先生が首からぶら下げている物を見た。
「名札ってつけるんだな、先生も。」
「まあね。今日は定例会議があったから、付けていないと怒られるんだよ。」
白とオレンジを基調としたネームプレートに、フルネームと顔写真、そして専門科が記載されていた。
「えっ、先生って。畑ヶ野って苗字なんだな。」
「そうだけど、それがどうかしたのかな?」
俺の周りでこの名字に聞き覚えの無い人はいないはずだ。
だって散々話し合の中で出て来たから。俺は体の感覚が、徐々に無くなっていくような気がした。
「俺の知り合いにも同じ苗字の奴がいて、敦って言うんだけど。そんな人が、身内とかにいるのかなって思ったんだけど・・・・・・。」
「……いたよ。一年くらい前に亡くなったけどね。実は、四人でお見舞いきてくれた時に、話してたのは、その子の事だったんだよ。」
先生の声色が少し湿った事を、俺は聞き逃さなかった。
通りで聞き覚えのある内容だった訳だ。
勿論先生の心情面で、俺が知っていた事は皆無だったけど、『親戚の子』と言っていた話の内容に、俺は聞き馴染みがあった。
「俺と来海の親友で、そこで寝ている、真道とあきの親友でもあったんだぞ。」
俺は、少し嬉しい気分に浸っていた。
過去に生きた俺らの親友を知る、一人の仲間と出会った。
それが何よりも俺の心を躍らせた。
しかも、それは意外にも俺らの近くにいて、アツの事を大切に思っていた。
「真道君だったんだね。あのうつ病になったという少年は。それだけ敦君を好きでいてくれたんだね。」
先生の声が、少しだけ震えていた。
やはりこの手の話になると、先生の涙腺が緩くなるようだ。既に涙が零れていた。
「……ありがとう。私が言う事じゃないかもしれないけど……敦君の友達になってくれて……。」
俺らと同じように、先生にも敦という人間を失った悲しみが、心に負担として重くのしかかっていたのだと、俺はそう思った。
真道ほどいくと、流石に病んでしまうから駄目だと思うが、先生はそれに近い喪失感を抱いているのかもしれない。俺は先生の顔を見てそう感じた。
「敦君、言ってたんだよ……。友達が出来ないかもしれないって……一生孤独なんじゃないかって……。」
先生の声色は決して変わることが無かった。
熱くなることも、落ち込むことも無く、ただ同じトーンで語っていた。
「でもね、敦君が高校生になって、『たくさん友達が出来た。』って笑顔で私に言ってくれたのを、今でも鮮明に覚えているよ……。あんなに晴れ晴れとした顔、今までに見たことが無かったから……。」
先生は悲しみと嬉しさの中間で話していた。
俺らがアツの精神的支柱になっていたのと同じように、アツも俺らの支えになっていた。
「隼人君は最近見かけなかったけど、旅行でも言ってきたの?」
「ああ。前ここに来た四人と、ちょっと遠くに。」
俺の口から院長先生の名前を出す事が、どうしてか憚られた。
厚意にしてもらった事を口外するのは、言ってはいけない秘密を暴露するようで、罪悪感に苛まれそうな感じがした。
別に言う必要性も無いから、言わなくても咎められることも無い。だから俺は口にしなかった。
「いいねー。何か青春してるなって感じするよ。私は今、それどころじゃ無いほど忙しくてね。」
若干のやつれ具合と、目の下の黒い部分を見れば何となく想像は付いた。
ふと俺は、珍しく先生が首からぶら下げている物を見た。
「名札ってつけるんだな、先生も。」
「まあね。今日は定例会議があったから、付けていないと怒られるんだよ。」
白とオレンジを基調としたネームプレートに、フルネームと顔写真、そして専門科が記載されていた。
「えっ、先生って。畑ヶ野って苗字なんだな。」
「そうだけど、それがどうかしたのかな?」
俺の周りでこの名字に聞き覚えの無い人はいないはずだ。
だって散々話し合の中で出て来たから。俺は体の感覚が、徐々に無くなっていくような気がした。
「俺の知り合いにも同じ苗字の奴がいて、敦って言うんだけど。そんな人が、身内とかにいるのかなって思ったんだけど・・・・・・。」
「……いたよ。一年くらい前に亡くなったけどね。実は、四人でお見舞いきてくれた時に、話してたのは、その子の事だったんだよ。」
先生の声色が少し湿った事を、俺は聞き逃さなかった。
通りで聞き覚えのある内容だった訳だ。
勿論先生の心情面で、俺が知っていた事は皆無だったけど、『親戚の子』と言っていた話の内容に、俺は聞き馴染みがあった。
「俺と来海の親友で、そこで寝ている、真道とあきの親友でもあったんだぞ。」
俺は、少し嬉しい気分に浸っていた。
過去に生きた俺らの親友を知る、一人の仲間と出会った。
それが何よりも俺の心を躍らせた。
しかも、それは意外にも俺らの近くにいて、アツの事を大切に思っていた。
「真道君だったんだね。あのうつ病になったという少年は。それだけ敦君を好きでいてくれたんだね。」
先生の声が、少しだけ震えていた。
やはりこの手の話になると、先生の涙腺が緩くなるようだ。既に涙が零れていた。
「……ありがとう。私が言う事じゃないかもしれないけど……敦君の友達になってくれて……。」
俺らと同じように、先生にも敦という人間を失った悲しみが、心に負担として重くのしかかっていたのだと、俺はそう思った。
真道ほどいくと、流石に病んでしまうから駄目だと思うが、先生はそれに近い喪失感を抱いているのかもしれない。俺は先生の顔を見てそう感じた。
「敦君、言ってたんだよ……。友達が出来ないかもしれないって……一生孤独なんじゃないかって……。」
先生の声色は決して変わることが無かった。
熱くなることも、落ち込むことも無く、ただ同じトーンで語っていた。
「でもね、敦君が高校生になって、『たくさん友達が出来た。』って笑顔で私に言ってくれたのを、今でも鮮明に覚えているよ……。あんなに晴れ晴れとした顔、今までに見たことが無かったから……。」
先生は悲しみと嬉しさの中間で話していた。
俺らがアツの精神的支柱になっていたのと同じように、アツも俺らの支えになっていた。