僕らは運命の意味を探していた。
 あいつがいれば空気も雰囲気も明るくなるし、気持ちが沈んでいた時は必ず励ましてくれた。

「アツは、いつでも俺らを楽しませてくれたんだ。ボケたりツッコんだり、皆の前に立っては流行りのギャグなんかをしてみたり。人の心に寄り添ったり。」

「敦君がそんな事を……。でも、誇らしいよ。そんな素晴らしい人が近くにいたなんて……。」

 少しずつ、先生の涙も止まって来ただろうか。口調も元に戻って来た。

 アツは、いじめられていたとは到底思えなかった。人格者で僕らのムードメーカーでもあった。

 確かに俺らが話しかけるまでは、ずっと席で一人退屈そうに外を眺めていた。

 しかし、話してみると太陽のような性格の持ち主で、俺らの生活までも色鮮やかにしてくれた。

 恐らく、アツの通っていた中学の雰囲気が、アツに適さなかったのだと、俺は思う。

 物静かな人をいじめようという雰囲気が漂う環境では、アツ本来のコミュニケーション能力が発揮されなかったのだろう。

「アツは、精神障害を患ってたのは、知ってるよな?」 

「えっ、そうだったのか? それは知らなかったな……。」

 もしかしたら、アツのお母さんがあまり口外しなかったのかもしれない。

 アツ自身の意思もあるだろうし、そこら辺の事柄を全部汲み取って親戚でも、話はしなかったのだろう。

 俺らが知っているのは、単純にアツ本人から聞いた事で、何の気なしに、アツが突然話し出した。

 俺は教えてくれたことが、凄く嬉しかった。

 アツが僕を友達として認めてくれているような、そんな意図を感じた。

「私は仲の良い親戚のつもりだったけど、敦君はそう思ってなかったのかな。」

 今となってはアツの真意は分からないまま、闇の中に葬られてしまった。

 でも、あのアツの事だから人で選ぶような事はしないだろう。何かしら理由はあったと、俺は思う。

「忘れっぽい奴だから、単純に言ってなかっただけ、とかなんじゃないのか?」

「そんなもんなのか?」

「人の理由って意外と浅はかだったりするんだ。何となく、とか。適当に、とか。逆に変にこじらせて、考えすぎる方が、よくねえぞ。」

 それが真道のような状態を生み出すのだから。

 時には割り切る事も大事だったりするのである。

「そうか……そうかもしれないね……。私な、今までさ考えてこなかったんだよ。敦君と上手くやれていたのかとかさ。だって、信じて疑わなかったんだよ。自分が敦君と仲良くやれてるって。」

 先生は四人の様子を見終わった後に、パイプ椅子に腰を下ろした。

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