僕らは運命の意味を探していた。
 僕だけが事情とやらを知らない状態で、二人が会話をしているから、少し寂しい気持ちになっていた。

「で、その『あれ』を使って、この世界を作ったのか? 凄い便利だな、それ。」

「真道はそう思うのか。まあ、見方によればそれもあるか……。」

 アツは意味深な雰囲気を出していた。そして少し間置くと、続けて話した。

「『あれ』が無くなれば、もう二度とあの世ですら存在できなくなるんだ。意味そのままに消失する。」

 平然とした様子でアツは僕に言うけれど、決してそんな調子で話していい内容では無い気がした。

 向こうの世界の事情を、全く理解していない僕だが、雰囲気的に禁忌的なものだと思った。

「それって……。」

「諸刃の剣ってやつだよ。でも私はね、それでよかったんだ。自分の復讐が達成できれば、なんでもね。」

 一岡は、それだけ僕らの事を憎み、恨んでいたという事だ。

「でも、結局君の私利私欲で、背景を何も知らないままやった訳でしょ? 僕は流石に納得いってないし、それに真道たちへ恩を返したいから。」

 アツは僕らに対して、嬉しい事を言ってくれていた。

 しかし、どういう訳か僕の心のざわめきが肥大化していった。

 それがなぜなのか、今の僕に知る由も無かった。

「敦、君はダメだって。それをやっちゃ。ほんとに消失しちゃうんだよ?」

「龍次にだってもう、残って無いんでしょ?」

 平然と意味不明な会話を繰り広げる二人。

 アツの発言を受けて僕は、本格的に何の話か読めなくなってきた。

「まあ、作った時にほとんど使ったから、もう元の場所に戻る力も無いよ。」

「そうか……。ここは生と死の狭間、多少なりとも、存在するのにも『あれ』は必要になるからね。」

 僕には、議論が空中戦過ぎて、なんのこっちゃ分からなかった。

「それってさ。」


 僕らが死んであの世に行ったときに、アツたちはいないって事?


 僕は恐る恐る聞いた。

「そう、なるね。」

「だったら、そんな事しなくていい。僕のためなんかに使わないで‼︎」

 心からの叫びだった。

 一度死に追いやってしまった親友に命を救われるなんて、僕の精神が持ちそうに無かった。

 僕の涙腺は、決壊寸前まで来ていた。もう、抑えられそうになかった。

「言ったでしょ。これは僕からの恩返しだって。だから、何も考えずに受け取ってよ。」

 アツの決意は固かった。いくら僕が止めたって聞く耳すら持ってくれなかった。

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