僕らは運命の意味を探していた。
「分かったよ。一岡、最後に確認だけさせて。君は僕と心中してもいいか?」

「逆にありがたい。だって死ぬとき孤独じゃなくて済むから。」

 アツは勝手に、話を進めているようだった。

 しかし僕は、全く気が済んでいなかった。

「一岡。……真道を押さえて。」

 運動を全くしてこなかったせいで、僕には筋力が無かった。

だから一岡の力に全く抵抗できなかった。

「やめろ、離せよ‼ アツ、止めろ‼ 僕はそんなこと望んじゃいないぞ‼」

「知ってるよ。これは僕の恩返し。君の意思は関係ないからね。」

 アツは屋上の校庭側に移動して、一つ大きな深呼吸をした。

 そして振り返って、僕の目を見て言った。

 彼が浮かべた笑顔には、嬉しいとか、楽しいとか、そんな前向きな気持ちが無かったように見えた。

「楽しい時間を過ごせて良かったよ。ありがとう・・・・・・。こうやって最後の会話が親友とで、僕は幸せだった。」

「何言ってんだよ‼ 僕たちが死ぬまであの世で見守っていてくれよ。僕たちが死んだ後、お土産話をたらふくさせてよ…………。」

 それがもしかしたら、彼らにとって苦痛になるかもしれない。

 そうだったら話さないで、胸の中に仕舞い込むだろう。

 でも向こうの世界で、また話をしたかった。僕らが向こうの世界に行って、高校の続きをしたかった。

 だから僕からもさせてくれよ、不公平のままでいたくないんだからさ。

「僕にだって恩くらい返させてくれよ……。」

 それは僕が絞り出して、彼に届けられた言葉だった。

「自分だけ恩を返して終わりなんて、あんまりだよ……。僕にだってそのチャンスをくれよ……。」

 溢れる涙は止まる事を知らずに、ずっと流れ続けていた。

 一年間溜め込んだ想い、今それが解放されているように気がした。

 今この瞬間でしか、自分の抱えた想いは届けられない。

 だから、気持ちを余すとこなく伝えたかった。

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