僕らは運命の意味を探していた。
エピローグ
果たした約束
帰還から二週間ほど経った頃、僕らはようやくこの日を迎えた。
「僕らも、とうとう退院か。過ごしてみると、意外と早いもんだったな。」
僕は独り言のようにそう言った。
目覚めてから、今日までを振り返ってみると、僕らは濃厚な日々を過ごしていたと思う。
筋肉回復のためのリハビリはもちろん、合間の雑談は、あの世界での関係性そのままだった。
僕は、少し嬉しい感情を抱いている事が、何だか複雑だった。
帰還後三日目、現実で初めて、紗南と司令官に会った。
表情は明るかったものの、戸惑いの色も同時に伺えられ、僕は堪らずその理由を尋ねてしまった。
「あのよ……俺ら商店街の方まで散歩してたんだけど、突然周りが白い光で包まれてよ。俺らそれに飲み込まれて終わったと思ったら、現実世界まで戻って来れててよ……。どうなってんだよ、これ……。」
僕はハッとした。
思い返してみれば、二人に帰還までの経緯を話していなかった。
単純に忘れていたと言えばそれまでだけど、見舞客の対応が忙しかったのが、本音だった。
しかし僕には言い訳な気がする。特に、隼人と来海は時間を見つけては遊びに来るから、僕も同じようなことが出来たはずだ。
それでも、楽しい日々を過ごせていたから、僕的にはかなり満足していた。
けれど、肝心な事をすっ飛ばしていたようで、顔を合した二人が僕を見つけるなり、猛スピードで近づいて来た。
そして現在に至る。
「話せば長くなるんだけどさ…………。」
僕は全てを順序だてて説明した。
屋上で一岡とある種のけんかをした事、突然アツが現れた事、昔の僕の発言を謝った事、なによりアツが僕らの恩人となった事。
僕は全てを包み隠さず、二人に語った。
「敦君が、そんな事を……。」
紗南はそれを聞くなり、落ち込んだ気分になってしまっていたように、僕の目に映った。
「あの世界って、本当に人の心残りが作り上げた世界なのか? そんな事があっていいのか?」
「僕にも真相は分からない。でもあの白い光は、あいつがもってた希望の光なんだ。もしかしたら将来を楽しみに過ごした一人の青年の『心残り』が具現化した姿なのかもしれないな。」
二人には互いに心残りがあって、それは相反していた。
絶望を復讐心に変えて、あの世界を創造し、僕らの命を絶とうと目論んだ一岡。
希望を恩返しに変えて、あの世界を訪れ、僕らを生還させてくれたアツ。
白と黒の心残りがぶつかった事で、あの世界は消失した。
そして心残りが消えた二人の魂もまた、その世界と心中する形で、消えてしまった。
儚く散った二人の魂は、安らかに成仏していったのである。
一岡は偽の悪魔だった。それは彼の行動が物語っていた。
確かにあの殺人ゲームを遂行したのは一岡だし、二人の命が奪われた。それは紛れもない事実だ。
しかし、彼はあきを殺さなかった。
どうやら、彼の中にもまだ人間の心が残っていたようだった。
でも、彼らはもういない。向こうの世界で、僕らを見守ってくれていた友は、もう僕らのお土産話を待っていてはくれない。
その現実を僕は受け入れようと必死だった。
「僕らも、とうとう退院か。過ごしてみると、意外と早いもんだったな。」
僕は独り言のようにそう言った。
目覚めてから、今日までを振り返ってみると、僕らは濃厚な日々を過ごしていたと思う。
筋肉回復のためのリハビリはもちろん、合間の雑談は、あの世界での関係性そのままだった。
僕は、少し嬉しい感情を抱いている事が、何だか複雑だった。
帰還後三日目、現実で初めて、紗南と司令官に会った。
表情は明るかったものの、戸惑いの色も同時に伺えられ、僕は堪らずその理由を尋ねてしまった。
「あのよ……俺ら商店街の方まで散歩してたんだけど、突然周りが白い光で包まれてよ。俺らそれに飲み込まれて終わったと思ったら、現実世界まで戻って来れててよ……。どうなってんだよ、これ……。」
僕はハッとした。
思い返してみれば、二人に帰還までの経緯を話していなかった。
単純に忘れていたと言えばそれまでだけど、見舞客の対応が忙しかったのが、本音だった。
しかし僕には言い訳な気がする。特に、隼人と来海は時間を見つけては遊びに来るから、僕も同じようなことが出来たはずだ。
それでも、楽しい日々を過ごせていたから、僕的にはかなり満足していた。
けれど、肝心な事をすっ飛ばしていたようで、顔を合した二人が僕を見つけるなり、猛スピードで近づいて来た。
そして現在に至る。
「話せば長くなるんだけどさ…………。」
僕は全てを順序だてて説明した。
屋上で一岡とある種のけんかをした事、突然アツが現れた事、昔の僕の発言を謝った事、なによりアツが僕らの恩人となった事。
僕は全てを包み隠さず、二人に語った。
「敦君が、そんな事を……。」
紗南はそれを聞くなり、落ち込んだ気分になってしまっていたように、僕の目に映った。
「あの世界って、本当に人の心残りが作り上げた世界なのか? そんな事があっていいのか?」
「僕にも真相は分からない。でもあの白い光は、あいつがもってた希望の光なんだ。もしかしたら将来を楽しみに過ごした一人の青年の『心残り』が具現化した姿なのかもしれないな。」
二人には互いに心残りがあって、それは相反していた。
絶望を復讐心に変えて、あの世界を創造し、僕らの命を絶とうと目論んだ一岡。
希望を恩返しに変えて、あの世界を訪れ、僕らを生還させてくれたアツ。
白と黒の心残りがぶつかった事で、あの世界は消失した。
そして心残りが消えた二人の魂もまた、その世界と心中する形で、消えてしまった。
儚く散った二人の魂は、安らかに成仏していったのである。
一岡は偽の悪魔だった。それは彼の行動が物語っていた。
確かにあの殺人ゲームを遂行したのは一岡だし、二人の命が奪われた。それは紛れもない事実だ。
しかし、彼はあきを殺さなかった。
どうやら、彼の中にもまだ人間の心が残っていたようだった。
でも、彼らはもういない。向こうの世界で、僕らを見守ってくれていた友は、もう僕らのお土産話を待っていてはくれない。
その現実を僕は受け入れようと必死だった。