僕らは運命の意味を探していた。
 「ここが商店街。見ての通り、シャッター街。」

 紗南が視線を送る先には『商店街へようこそ』という看板があった。それの擦れた文字のお出迎えを受けて、僕らは中へ進んだ。

 紗南の言葉通りのシャッター街。看板があるから廃業した店が立ち並ぶ商店街、という設定なのだろう。

 所々にチラシや容器が散乱しているし、もしかたら何か探し求めるものが見つかるかもしれない。そんな期待感が膨れ上がっていた。

「真道、ここから入れるみたい。」

 紗南が自由過ぎる件について。

 これについて議論が必要な気がするのは、僕だけなのだろうか。

 もう少し、不気味がってもおかしくないシチュエーションなのに、紗南は物おじせず廃墟と化した家々に土足で入っていった。

「ああ、今から行く。」

 僕は彼女に続いて、店舗の奥にお邪魔させてもらった。

 内装は、率直に申し上げて普通だった。

 所々黄ばみの目立つ白の壁紙に、使い込まれたキッチン、一般家庭と大差ないリビングにテレビ。

 外からの感じ三階建てだから上に繋がる階段も当然存在する。

 しかし、困ったことに廃墟のわりに、異変が無さ過ぎてどこから手を付ければいいのか分からなかった。

 とりあえず紗南を二階に行かせたが、捜索と言える程探すという作業を必要としないだろう。なんせ物が少なすぎる。

 ん? 物が少なすぎるか、だったら……。

 僕は彼女一人を残して家を出た。そして裏に回り仮説の確証を得た。

 何でこんな陰湿な事をするかな……。

 見落としていたら、間違いなく時間のロスに繋がっていた。

「紗南。鍵とか見てないか?」

「あー、それならそこの引き出しの中に入ってるぞ。」

「サンキュー。」

 僕は腰をかがめて、錆びた黄土色の鍵を入手した。

 これからは、もう少し疑いの度合いを強めたほうが良さそうだと、僕は決心した。

 一分一秒でも無駄にさせようという心理の元作り上げられた残酷な要塞に、優しさなんていう甘えは存在しない。あいつは確実に僕ら五人を殺しに来ている。

 「やっぱりな……。これだけ大量の荷物があればどこかに手掛かりがあるはずだ。」

 そこには、裏路地に置かれた鼠色の普遍的な倉庫に、家具から、料理器具、勉強道具まで全てがここに収納されていた。
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