僕らは運命の意味を探していた。
ひと段落し、僕は紙を机の上に並べて元に戻すと、教室の扉近くにしゃがむあきの隣で同じ体勢をとった。

「あきは何ともないのか?」

 僕は自然な感じに声をかけた。
「う、うん。私は大丈夫たけど……、なんで?」

「いや、なんか変化があったら、教えて欲しかっただけ。まあ……心配ってのも、無くは無いけど。」

「えーー。それは持ってて欲しかったなー。」

 あきは冗談っぽく言った。フグのように頬を膨らませ、空っぽの不満感を僕に提示した。

 それから他愛もない話を続けひと段落した頃、僕はおもむろに立ち上がった。

「どこ行くの?」

「少し風に当たってくるよ。」

「そっか。じゃあ、また後で。」

 僕は適当に相槌を打つと教室を後にした。

 ゆったりとした速さで、昇降口の階段に向かった。何となく居心地が良くて、時間が出来ると足を運んでしまう。

 三段目の左端に腰を下ろす。そして視線を上にむけた。

 雲一つない澄み渡る青空、疲労感に襲われる僕を撫でるように吹く風、人の手が一切加えられていない森林。

 これだけ穏やかな世界が、惨劇の舞台に変貌を遂げている。その事実に、まだ日の浅い僕は信じられないでいた。
     
 二日目も陽が傾き出す時間帯。分からない事も多く、慣れも進んでいないけれど、この惨劇が他人事で片付くような簡単極まりない事件ではないと、僕は思っている。

 まだ何か黒い感情が随所に蠢いているはず。僕はそんな予想を持っていた。

 今後、捜索活動に尽力していれば、何かしらの形となって僕らの前に現れる。その時が来るまで、根気強く続ける事が必要不可欠だ。僕はそう思った。
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