僕らは運命の意味を探していた。
「戻ろっか。」

「ああ。そうだな。」

 そう言っても、もう空は夕焼け一色。今から創作活動に移行するのはリスクが高い。今日はこれ以上の活動は出来ないだろう、僕はそう思った。

 そして僕は今日の活動を半ば諦めたような形で基地へ戻った。

「休めたかー。」

 教室入るとすぐさま司令官が話しかけてきた。落ち着いたように口調も落ち着きを見せ、血色も随分と回復していた。

 教室の奥の方では、友花とあきが笑顔を浮かべながら会話を弾ませている。その姿が微笑ましかった。

「ああ。おかげさまで体が軽いよ。」

僕は本調子を取り戻した司令官に合わせるようにして言った。

「それは何よりだ。」

 司令官は微笑みながらそう言うと、「活動はまた明日。」と言う旨を全員に伝えた。

 普段なら反論する紗南達も理由を理解しているようで、異論を唱えることはしなかった。

 紗南と友花が教室を後にし、三人になった教室でふと神妙な面持ちで司令官が歩み寄ってきた。

「真道、ちょっといいか。」

「いいけど、どうしたの?」

「この日記についてなんだが……。」

 司令官はそう言って、今まで集めた日記のカケラ達を持ってきた。僕はその右手に視線を落とし、司令官が言葉を紡ぐのを待った。

「……記憶についてのもので間違いなさそうだ。」

 そして司令官は、冗談のトーンとは到底思えない声色でそう言った。この口ぶりからすると何か確証を得たのだろう。

「そうなのか? なんで分かるんだよ。」

 そして再び、司令官は間を取った。その間に僕の不安感が増していくのは、言うまでもない事だった。

 三度口を開いた司令官から飛び出した言葉は、自分の推理力に自信をつけるのだった。

「……俺の記憶が少し戻ったからだ。」

「やっぱり……。」

 僕は無意識のうちに返していた。

 やはり激痛と失われた記憶には、何かしらの関係があって、もしかするとこの世界の根幹に関わる部分なのかもしれない。

 根幹まで行かなくとも、重要な手掛かりであることはまず間違いは無さそうだ。

「ああ。だがほんの僅かだけだがな。」

 それでも大発見だと思う。

 今後どんな道筋を辿るのかを示す、一つの可能性が見えたことは大きな一歩に違いないと、僕は思った。

 その事実が示すもの、それは痛がった三人が記憶を刺激されたということだった。つまり三人の記憶の中に日記に描かれた頃のものが存在する。

 言い換えれば何かしらの形で携わっている、という事になると僕は踏んでいるのだ。
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