僕らは運命の意味を探していた。
「だったらゲームマスターの正体って……。」

 どうやら僕と同じくあきも気が付いたようだ。

「ああ。日記を書いた本人だろうな。多分動機も今後明らかになるはずだよ。」

 恐らくだけど、いじめからくる憎しみが動機になるだろう。

 日記の内容から察すると、おそらく理不尽な理由で精神的かつ肉体的な攻撃を、長期間にわたって受けていた。

 当たり前だが、ストレスや疲労も大きくなる。心中を察すると、僕には一概に責める事が出来そうになかった。

「マー君と私は、なんで連れてこられたんだろうね。」

 そこで疑問として浮上するのが、僕とあきが連れてこられた理由だ。

 なぜか唯一記憶を持つあきに、僕らがいじめを働いた過去があるか尋ねても、思い当たる節はないらしい。

 もしかすると、ゲームマスターの手違いなのか? いやそれはありえない。これだけ綿密に練られた計画なのに、そんなミスを犯す訳がない。

 そう考えると、今後違う形で三人みたく頭を抱えて倒れ込むんだろうな……。

 ある種の恐怖心に駆られながら、僕は司令官の記憶について質問した。

「俺の戻った記憶は中一の夏休みまで。その間に二人とは会っていないぞ。それと、重大な問題があってな。」

「重大?」

「ああ。いじめていた奴の身なりや顔、名前まで何一つとして思い出せないんだよ。」

 どうやらいじめていた事は、司令官の記憶に残っているらしい。素直に言うと司令官達三人の神経を疑いたくなる。

 でも、ここでその気持ちをぶつけるのは、今後を考えるとあまりにリスクが高い。だから、その事について触れられなかった。

「んー……。そういやぁ、なんか分かんないんだけどさ、さっきからずっと胸糞悪い気がしてんだよな……。なんでかは分からないけど。」

「胸糞悪い、か……。」

 何か不愉快な出来事があったのだろう。今にまで引きずるほど嫌な気分になるような何かが。

 それが心の奥底にこびりついて取れなくなってしまった。その結果を招いたのかもしれない、僕にはそう思えてしまった。

 司令官の記憶はここまで。本人もあまり役立つ情報を持っていないと、困ったように笑いながら言った。
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