僕らは運命の意味を探していた。

現実で

とある大都市駅の前の銅像傍。

 「おい、どうするよ。あいつら来ないんだけど。」

「まあ、もう少し待ってみない? あと一時間くらいさ。」

 俺は適当な返答を返して、考えに耽っていた。

 一時間の遅刻を俺は重く受け止めていた。

 あいつに限って遅刻を飄々出来る程、人間的に終わっちゃいない。

 万が一の場合は、必ず連絡がくるはずだ。しかもしっかり者のあいつまで、約束をすっぽかすはずがない。

 確かに誘ったのは俺の方だ、少し強引な形で取り付けもした。

 しかしそれに怒って来ないのなら、もう少し日常生活に変化があるはずだ。

 ラインを削除するとか、学校で無視するとか。目に見て取れる範囲で何らかの行動に出ていてもおかしくはない。

 でも、あいつらはそんな素振りさえ見せなかった。

 真道、あき。お前らは一体今、どこで何をしているんだ……。

 同刻。とある高校の校舎にて。

 「佐南のやつ、一体どこほっつき歩いてるんだよ。」

 私は、手鏡に映る自分の呆れ顔を見ながらそう呟いた。

 黒板上の白い掛け時計が示す時間は、予定時間の三十分後だった。二人の待ち合わせ時間はとうに過ぎていた。

 紗南が「勉強ヤバいから一緒に出てれない?」って誘ってきたくせに、自分がすっぽかしてるじゃんか……。

 まあ、そういうとこあるから、何とも言えないけど、もうそろそろやめてくれなかな……。

 そんな愚痴をこぼしつつ、机で一人メイクに勤しんでいた。

 ふと、柄にもなく勉強なんかのために時間を費やす自分を省みると、紗南に対して無性に腹が立ってきた。

 まじで、あいつは今どこで何をしてるんだよ……。
 
 またまた、同時刻。とある集団塾の一室にて。

「えー、解の公式は……。」

 俺は、黒縁の眼鏡をかけ、頭部の肌色が目立ってきたおじさん講師の授業を話し半分で聞いていた。

 まだ解説は、触りの部分だったが、すでに集中力は無くなっていた。

 その理由は簡単で、いつも真面目に授業を受けているはずのあいつの席が空席だったから。

 しかも無断欠席ときた。何か理由があっても、誰だって連絡の一本は入れるもの。あいつなら尚の事だ。

 しかし、あるべきものが今日に限って無い。

 人間はミスをする生き物だから、極稀に手違いが生まれたとしてもなんら普通の事だが、なぜか胸に妙な胸騒ぎがした。

 『虫の知らせ』というやつだろうか。

 そんな信憑性の無い体験を今まで感じてこなかったから自分では分からないが、もしそうであれば然るべき方法をとろうと、俺は思う。

 本当にあいつは何してるんだよ、マジで……。

そんな呆れたような言葉さえ口に出てしまった。
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