僕らは運命の意味を探していた。

夜の外出

 再び現在地不明の僕らにて。

 僕らは毎日手掛かり探しで、変わらない天気の下をひたすらに歩いて、情報を共有し合うという、過酷な日々を続けていた。

 もう探す場所が見当たらなかった。

 怪しい場所をしらみつぶしに捜索して、書き込んだ地図は既にバッテンマークで埋め尽くされていた。

 その状態で五日目が終了した。

 手掛かりは七枚のメモだけ。

 しかも最後の三枚に至っては核心的な中身の無い、日々の感想や気づきをまとめたものに過ぎなかった。

 だから、手元にあろうがなかろうが大した差は生まれない物だった。

 言い換えれば、三日の苦労は、ほぼ無意味。その事実が僕らの目の前に訪れた。

 日々の疲労の蓄積を少しずつ感じ始めて士気も、初めに比べて下降気味感は否めなかった。

 六日目の夜、僕はある提案を考えた。

「そろそろ、夜間の外出を解禁したいと思うんだけど。」

 僕は恐る恐る提案した。

「でも、危なくないか? 街灯もほとんど無いし。司令官だって初めにそう言ってたし、君だって納得のいく理由を出したじゃないか。」

「ああ。確かに街灯が少ないとは言ったよ。それで外が危険だとも言った。」

「だったら……。」

「僕が危険だと言ったのは、この夢の中のマップが分かっていなかったから。暗くて視界が狭いから、緊急事態に対応するのが困難。だから初めのうちは昼間だけって言ったんだ。」

 僕らは既に、地図も把握していて、環境に対する順応も各々進んできている筈だ。

 地理も頭に入っている筈だから、何が危険なのか各自で掴んでいるだろう。

「それでも危ない事には変わらないでしょ。第一、灯りはどうするのさ。」

「携帯のライトで十分でしょ。バッテリーは無限に使用できるみたいだから、途中で切れる心配も無い。」

 まあ、ゲームマスターがバッテリーの無限を解除するなんて事も考えられるが、そこまで選択肢広げてしまえば、かえって足枷になる。

 第一……。

「現状、ほとんど手掛かりが見つかってないんだ。夜明けから夕方まで必死になって捜索を続けてこれだ。という事は捜索範囲を一段階広くする他、方法が無いと思うんだよ。」

「ん? 昼間の状態って、何?」

 紗南はきょとんとした顔で、聞き返してきた。

 あくまで僕の推論に過ぎないから声を大にして言えないけれど、遂行する価値はあると思う。

 始まって六日が経過している状態で、そろそろリスクの伴う行動を取っていくべきだ。僕はそう強く訴えかけた。

「なんでそんな事をする意味があるんだよ。」

 司令官は食い気味にそんな質問を投げかけた。

 一番の理由はそこだ。これほど面倒な仕掛けをなぜ作り上げる必要があったのか。

 僕の予想は単純で、かつ残酷なものだった。

「僕らを陥れるためだ。」

「陥れる?」

「ああ。始めにインパクトのある光景を見せただろ? あれって、僕らを委縮させて積極性を奪ったんだよ。危険の少ない昼間に活動して、危険極まりない夜間はここに留まらせる。そうすれば、夜間に発現する変化を見られずに済むんだ。そして脱出不可能に追い込む。」

 こんな確証の無い仮定の展開を、得意げに語って良いものなのか?

 僕はそんな疑問を抱きながらも、今後行うべき活動のプレゼン的なものを終了させた。

「お前、やっぱスゲーよ……。」

「ね……。反論のしようが無い。」

 そう司令官や紗南などは、納得してくれたようだが、もちろんそれだけでは無かった。
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