僕らは運命の意味を探していた。
そんな中、店の奥から司令官の声がした。

「真道―。あったぞー。」

 駄菓子屋の奥にある、店主の住居らしき部屋のタンスの引き出しの中に、日記の切れ端が入っていた。

「六月三十日。いじめ仲間が出来た。聞くとこの人も同じようにいじめられているらしい。二人なら乗り越えられるかな・・・・・・。だってさ。」

 携帯の僅かな明かりを使って僕は音読した。

 おそらく八枚目の日記だ。日付が近い。

 けど、どこかで聞いたような文言だなこれ。

 一体どこで……。ん?

「お、おい! 真道、座り込んでどうした!」

 僕はその場に倒れ込んだ。

 僕は、慌てる司令官を気にかけられるような心持ちでは、いられなかった。

 だって、僕が体験しているのは、皆が倒れこむほどの強さを誇る頭痛だったから。

 まともに喋ることも出来ないし、痛みに耐えるのが背一杯の状態だった。

「頭が割れるように痛い……。」

 僕は擦れるような声で、小さく言った。

 司令官は優しさで「立てるか?」と問うてくれた。僕は声を発することも出来ずに頷くだけ。
 司令官はその返答を見て、かがんでおんぶの体勢をとってくれた。

「分かった。それじゃおぶるから、捕まっててくれ。」

「ああ………‥。す、まん……。」

 そして、司令官は僕を軽々持ち上げると心配そうな声色で言った。

「もう少し、食べたほうがいいんじゃないか? このままじゃ早死にするぞ。」

 司令官は、優しくそう言った。

 僕は彼が司令官という役職に適任だと改めて思った。

 間違いなく僕が彼の立場なら、慌てて気の利いた言葉を掛ける心の余裕は無かっただろうし、まして人の心配なんか以ての外だったのだろう。

 そう考えると、僕にはこの能力が欠如している気がした。自分の意見を真っ先に述べて、他の人間の意見を言わせないような環境づくりを無意識の内にしていた。

 そんな我の強い人間にこの集団はまとめ上げられない。僕には、少しだけ罪悪感があった。
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