僕らは運命の意味を探していた。

疲れた時の砂糖

 「今日は休みにしよう。」

 活動が始まって二桁目の今日、その朝の会議で唐突に司令官は告げた。

 その司令官の気軽な言い方に苛立ちを覚えた。

「随分と余裕なんじゃないか。もう少し、緊張感持てよ。」

 僕の批判じみた反論に、紗南は乗っかるようにして言った。

「真道の言う通り。あんたさ、ちょっと危機感足りないんじゃないの?」

 あきは普段通りだったが、友花も納得のいかない顔をしていた。

 しかし司令官は一切表情を変えない。僕らの意見を聞いてなお、その冷静な顔を崩すことはなかった。

「それだよ。みんな肩に力が入り過ぎて、周りが見えてない。」

 司令官は全員の目を見て疑うことなく言った。

「……!」

 僕はハッとした。初めのうちは納得できない心持ちで、司令官を敵視するような目で見た。

 でも論より証拠、これまでの足跡が全てを物語っていた。

「確かに、司令官の言う通りだな……。」

 息を吐くような声でそう返した。

 当然のことながら、友花と紗南は驚きの表情と共に僕を見ていた。

 同時に反対派に戻ってくるよう促してきた。しかしもう彼女らの言葉は僕の耳に届いては来なかった。

「最近の活動を振り返ってくれ。こんな事言いたくはないが、成果が落ちてきてるんじゃないか?」

 司令官は僕らに対して、言い返しようのない現実を突きつけた。

 最近の「成果」に目を向けてみよう。

 ここ三日で二枚、しかも脱出には全く関係ない内容ばかり。

 枚数も活動時間が増えたにも関わらず、落ちてきている。僕も含めその事実は分かっていた。

 だからこそ、焦りが伴っていたのは確かだ。手掛かりを求めすぎるあまり視野が狭くなって、余計結果が出ない状況に陥っている。

 僕らは知らないうちにどうしようもない悪循環の中にいた。

「まとまった時間休息をとる事も大事だ。一度頭をリセットして、活動しよう。」

 司令官は諭すようにしてそう言った。二人も折れてくれたのか、ため息混じりに意見を呑んでくれた。

「……分かった。そこまで言うなら休むよ。」

「そうしてくれると助かるよ。」

 そう司令官は優しく声をかけた。

僕はその姿を見て、改めて司令官としての器に感動していた。

 
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