僕らは運命の意味を探していた。
 どのくらい空を眺めていただろうか。隣の女子が久々に口を開いた。

「もう十日経ったんだよね。」

「ああ。かなり早かったな。」

 どこか現実に引き戻されたような、そんな焦燥感が僕にはあった。

 中盤に差し掛かって、進捗状況で言えば絶望的。最後まで何があるか分からないが、かなり厳しい状況に立たされているのは明らかだった。

「大丈夫、だよね、ちゃんとここから帰れる、よね。」

「大丈夫だよ、心配すんなって。僕が絶対あきを現実に返すから。」

 無意味な自信だったのだろう。根拠も無く、確証なんてものは持ち合わせていない。

 でもこんな所で弱気になる事だけは避けたかった。僕がどうなろうと構わない、でもこの人の笑顔だけはどうしても守りたかった。

「ありがとう、やっぱりマー君は強いよ。こんな状況なのに、私の心配をしてくれるんだもん。普通出来ないよ。」

 あきは不安げな声を上げた。僕にはその震える背中を擦ってあげる事しか出来なかった。

「皆、凄いよね。こんな状況なのに、怖がらないんだもん。それでいて、自分の意見をはっきりと言うしさ。」

「あき……。」

「私、何の役にも立てて無いよ。意見もろくに言えずに、ただ笑って話し合いを聞いてるだけ。怖いんだよね、私の言った意見が間違ってたら。それで皆の足を引っ張ったら。そう考えるだけで、委縮しちゃう。」

 知らなかった、あきがこんな悩みを抱えている事を。

 確かにいつも笑って議論を聞いてくれているけど、役に立っていないなんて思ったことは無い。

 逆に皆の意見に適度な相槌を打ってくれるから、意見を出しやすかったりする。

「別に意見が出せるから役に立ってる訳じゃないし、出してないから役に立ってない訳じゃないよ。」

 僕は穏やかな口調で言った。

「あきはね、皆を笑顔にする力を持ってるんだよ。僕もそうだけど皆も、君との会話を楽しんでると思うんだ。」

「私、普通に話してるだけだよ?」

「凄さって、自分じゃ気付かないもんだって。」

「まあ、そうだけど……。」

 あきはどうも納得いかない様子で、自分の足元を見ながら足をぶらつかせていた。

 
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