僕らは運命の意味を探していた。
「えっ……。マー君、マー君なの?」

 驚いたような声色で僕の名前を呼ぶ人がいる。しかもその呼び方に聞き覚えがあった。

「あき、か? 何でここにお前が……。」

 透き通るように綺麗な黒い長髪に、凛とした大きな目、肌も白くてスタイルもいい、おまけに勉強までできると来た。

 唯一の欠点は運動神経で、体育の成績だけはいつも壊滅的だった。

 そんな僕の幼馴染の名は櫻子あき。偶然か必然か、僕らは幼稚園の頃からの付き合いだ。別段記憶に深く刻まれるような出来事があった訳でもないし、特別な関係にも勿論発展してこなかった。正真正銘の幼馴染という訳だ。

 「マー君こそ、なんでここに?」

 僕は事の顛末を話した、包み隠さず全て。当然のように彼女も同じだった。僕と違ったらどうしようかと肝を冷やしたが、そんな心配は不要だった。笑顔で『同じだね。』なんてお気楽な様子で話していたから、どこか安堵感を覚えた。

 「お前もか、ここに連れてこられたのは。」

 中心で話をまわす男子に話を振られた。茶髪で遊んだヘアスタイルにきりっとした眉毛が特徴で、それでいて目は一般的なサイズ。状況が状況だから険しい表情を浮かべているが、世間ではもてはやされる対象になるタイプの男子だと思う。

「ああ。僕は春原真道。よろしく。」

 僕は右手を出して自己紹介をした。

「そんな、馴れ合いをしてる場合かよ。早くこんな所から、おさらばするために作戦立てるぞ。」

 パンッ。

 僕の右手は儚くも、彼によって弾かれてしまった。妥当な事を言っている分、何も言い返せないのが悔しかった。少しくらい付き合ってくれてくれてもいいのになんて思うが、やはりそれどころじゃないのが現実だった。

「六人か……。新入り、お前はどう行動するべきだと思う?」

 新入りって……ああ、僕か。

「まずは情報収集だろうな。ヘタに動いて五人になるよりは、人員を守りつつ確実に脱出する方法を選択するべきだ。」

「だな。よし、まずは校舎の中からだ。隈なく探せよ。」

 数刻前に彼は冷たい態度を僕に見せたが、今度はすぐさま僕の意見に乗っかった。対応の早さには恐れ入るが、彼の言動に少し戸惑ってしまった。しかしこんな態度で、全員が納得するとも思えない。早速その返答がこれだ。

「何しきってんのよ。てかさ、あたしたちの意見は無視な訳? 別にあんたの意見を聞く義理は無いんだけど。」

 そこには司令官的立場の男子の真向かいで、真っ向から反論する女子がいた。肩に乗るくらいの茶髪で薄化粧を施し、穏やかな感じの目元で整った顔立ち。ギャルという種族の一員と思われるその人は、茶髪男子に真っ向から反対していた。

「じゃあ、どうするんだよ?」

 僕は少し呆れた様子で聞いた。

「私は、一人で情報を集めたいから。人がいると足手まといなの。」

 ったく、この状況分かって言ってんのかよ。こんな未知の場所で、何が起きるか分からない状態の中、無闇に行動したらどうなるかって、小学生でも分かるぞ・・・・・・。

 そう冷めた目線を向けながら、心の中で呟いた。
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