僕らは運命の意味を探していた。
 一時間後、あるアパートの前。

 俺、石川一好は疑問を持っていた。

 それは昨日の俊也が取った行動が原因で、夏期講習をあいつは無断で欠席した。

 誘ってきたのはあいつなのに、どうして来なかったのだろう。

 一か月前に突然俊也が昼食中に「勉強しないか?」と言いだした。

 聞けば、大學受験を見据えての早めの行動を、という事だった。

 この時は勉強に対する情熱が高いだけだと思っていた。

 でも俊也にそこまでの熱いものは無かったらしい。

 そして俺はその疑問を解決するために、幾度となく電話をかけ事実を確認しようと試みた。

 しかし何度かけても応答はない。夏休み期間で次いつ会えるかも分からない今、むず痒い感情を抑えきることが出来ず、今日朝早くに俊也宅を訪れた。

 そして現在に至る。
 
 ったくあいつ、結局最後まで来やしなかった。誘っておいてどういうつもりだよ……。

 その部屋には当然の事のように鍵が閉まっている。チャイムを何度鳴らしても、聞き慣れたあの男の声が聞こえることは無かった。

 その事実が更に俺のむず痒さを肥大させていった。

 しかし、いくら腹が立っているからと言って、法を犯す気にはなれない。俺はむず痒さを抱えたまま大人しく帰る事にした。

 扉に背を向けて一歩前に進む。そして俺はそこで歩みを止めた。

 それは開いていたツイッターにこんな呟きがあったからだった。

 『遊ぶ約束してて、一日連絡ないなと思ったら、そいつが部屋で気を失っていました。』

 そんな何気ない呟きを目にした。俺は次の瞬間、体中に悪寒が走った。

「大家さん。急いで俊也の部屋を開けてください。緊急事態かもしれないんです。」

 僕の必死の形相を見て、腰の曲がった大家さんはすぐに鍵を渡してくれた。

 僕は奪うようにしてそのカギを受け取ると、すぐに部屋の鍵を開ける。土足のまま部屋に上がると、すぐさま寝室に向かった。

「やっぱりか……。」

 目線の先には制服のまま眠っている俊也がいた。幸せそうでもなく辛そうでもない、全くの無表情で目を瞑っていた。

 彼からは一切の音が聞こえてこなかった。 
 
 いびきや寝息など、眠る間に必要不可欠なものが一切ない。俺は、自分の悪寒が的中したのだと察した。

 急いで救急車を呼び、何の考えも無く脈をとってみた。
 
 左手で測って俊也の鼓動を確認した。その瞬間胸の辺りで何かがすっと溶け落ちたような感じがした。

 
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