僕らは運命の意味を探していた。
「でも、ありがとう。やっぱり、マー君は私の事好きだね。」

「そっ、そうだけど……。」

「あー、顔真っ赤!」

 そう言って笑う彼女がやけに尊く見えるのは、多分全世界で僕だけなのだろう。

「あきだって、僕の事好きなんだろ。」

 半ば、小学生の強がりのような言い方で、僕は彼女に向かっていった。

「勿論。嫌いになる理由が見つからないもん!」

 よくもそんな恥ずかしい事を、さらっと言えるな……。
「こんな日々が長く続けばいいのにね。」

「おいおい、変な事言うなよ。現実世界に帰りたいよ僕は。」

「私だって、現実世界に帰りたいよ。」

 こういう時に矛盾という言葉を使うべきだ。僕は心の中でそう呟いた。

 彼女は、『でも、』と小声で言うと、そのまま話を続けた。

「マー君と二人で過ごす時間が、もっとあればいいのにって。現実世界に戻ったらさ、今みたいに帰る場所が一緒な訳じゃないし、学校とかでさ、二人の時間が無くなっちゃうから。少し寂しいなって思う。」

「でも、現実世界には帰ろうよ。高校卒業したら二人で住めばいいじゃないか。」

 現実世界に戻れば、もっと楽しい世界が広がっていると思うし、選択肢も広がる。

 遊びに出かけたり、どっちかの家でまったり過ごしたり、登下校の間に買い食いしたり。

 きっと元の世界には幸せな光景が待っているに違いない。僕はそう夢を見ていた。

「高校の間の辛抱だって。」

「あと二年か……。でも、我慢してた期間に比べれば可愛いものだよね。」

 我慢していた、ね。

 きっとあきはずっと僕の事を想ってくれていたのだろう。そして長い間僕に寄り添い続けてくれた。

 僕が現実世界でどんな心持ちだったのか、それは僕ですら知る由も無い事だった。

 でも、今ここにいる僕は彼女を好きで堪らない。それは揺るぎなかった。

 オレンジと黒の空が混ざり合う時間帯。

 徐々に気温も過ごしやすさを感じられるようになって、僕らは昼間よりも増して肌を密着させながら、基地に戻るのだった。
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