僕らは運命の意味を探していた。
 「真道くんは頭がいいみたいだね。」

 突然後ろから聞き覚えのない声がした。

 不意の出来事だったから、体を震わせてしまった。少々恥ずかしい気持ちを抱えながら、同時にある疑問も覚えた。

 どうして、僕の名を知っているんだ?

 そう思った瞬間に体から変な汗が出てき
た。この妙な胸騒ぎはなんだろう。まるでこの人に全てを見透かされている様な、そんな嫌悪感が体中に巡っていた。

「誰だ、お前は。」

「私はこの世界の創造者。ゲームマスターとでも読んでくれたまえ。」

 黒い、人間の形をした不気味な物体。顔のパーツも無く、人間的な要素を全体的な形以外で判別できない。どこから声を発しているのかさえも分からないから、はっきり言って気持ちが悪かった。

「早く僕らをこの世界から出せよ。」

「はははっ。それは無理な話だ。出たきゃ自分たちの力で脱出してみろ。」

 大笑いするそいつに、無性に腹が立った。でも何となく想像がつく、そいつに歯向かったらどうなるか。

「ふざけんなよ、何で閉じ込められなきゃいけられねえんだよ。」

 司令塔が声を上げる。憤慨という様子でゲームマスターを睨んでいた。僕はそいつの顔を見て『抵抗するな』という意味を込めて首を横に振った。

「ったく、仕方ねえな。」

「察しがいいようで。この世界は俺が仕切っている。俺が望むものは何だって叶うのさ。だから大人しくしたがっておいた方がいいぞ、死にたくなかったらな。」

 僕はそいつの一言で、僕らの立ち位置を何となく把握した。

「ここはどこなんだ。」

「それは内緒だ。自分達で当ててみたまえ。まあ、当てるのは無理だろうね。」

 ゲームマスターは高笑いしながら言った。僕の憤りの感情が徐々に大きくなっていく。いずれ爆弾のように我慢の限界を迎えるだろう。

 しかし僕の気持ちとは裏腹に、ゲームマスターは神経を逆なでするような話を続けた。

「脱出方法を教えてくれとかほざくなよ。敵が教えてくれるのは作られた話の中だけだ。現実っていうのは甘いもんじゃねえからな。」

 目がカッと見開かれて、口角は上がっている。もしゲームマスターに顔があればそんな表情を浮かべていただろう。こいつには近づいてはいけない、僕の本能がそう叫んだ気がした。

 「……おっと、取り乱してすまない。とにかくだ、ここから出て行きたきゃ、自分たちで方法を見つけるんだな。」

 全員が押し黙った。

 その気迫に圧倒された僕らは言葉を失い、同時に感情を失っていた。全員が思考を止めてゲームマスターに耳を傾け、どこか心に訴えかけるような魔法に感情をコントロールされたようだった。
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